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Re: 【中文推奨】かみさまのラルム【募集開始】 ( No.50 )
日時: 2017/10/30 02:26
名前: 流沢藍蓮 (ID: GfAStKpr)

>>49
【緑の草原にて/アズライト】

 「貴方に春が訪れますように」と渡された松ぼっくり。それを見て、彼は驚いたような顔をした。
 渡すものがどんなものでも。彼が氷を身にまとって以来、彼に積極的に何かを渡そうとする人はいなかったから。
 受け取った松ぼっくりは、ずっしりと重い。そしてどこか温かかった。今の季節は秋なのに、それからは柔らかな春の匂いがした。
 人の優しさに触れるのは本当に何十年ぶりかで、彼はどうすればいいのか戸惑いそうになる。
 しかし、確実にわかっていたことは。

(こういうときは、「ありがとう」と言うんだ)

 だから彼は不器用に、言い慣れぬ言葉を口にした。

「ありがとう」

 松ぼっくりなんて正直言って全く実用的ではない。何の役にも立たない無用の長物だ。しかし。
 それがたとえどんなものであろうと、誰かから心をこめて渡された、その事実が彼の氷をさらに溶かしていく。
 何の役に立たなくとも。暖炉の上や窓辺に置いたら、少しは綺麗に映えるだろうか。
 実用本位でまるで飾りと言う飾りが存在しない自分の部屋を思い出しながらも、彼は内心で苦笑した。
 受け取った松ぼっくりを、壊れ物を扱うかのような手つきでそっと、長いローブの内側に仕舞う。
 心のこもった頂き物。その存在は、ずっと冬の中で生きてきた彼にとって、尊ささえ覚えるようなものだったから。
 「ちぐはぐでも貴方ですもの」と優しく笑った彼女。アズライトの先へ行こうとしたから彼は少し足を速めて、彼女の道案内をするように先に立つ。

「どの季節も楽しみ方がある、か」

 確かにそうだなと彼は思った。
 季節にはそれぞれ良さもあって、悪さもあって。
 みんなそうやって違うから、四季ごとに「個性」があるからこそ、季節のめぐりは美しいのだ、と彼は感じた。
 しかし、それでも。

「それでも、僕は」

 思い出すのは宝石の記憶。

「春が、好きなんだ」


【大丈夫ですよ。短くなるときは私も短くなりますし。】