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Re: 【中文推奨】かみさまのラルム【参加者募集】 ( No.60 )
日時: 2018/01/22 00:23
名前: ゆきしま ◆BV.fqgxxRU (ID: Q8MrRCmf)

>>58

【青の氷原/ミッドナイト】

 無数の氷柱が、自分の姿を反射した。まだ入口部分だというのに、まるで森に茂る木のようにあちらこちらに氷柱が垂れ下がっている。
もう、何百年ぶりだろうか。ここに来るのは。私のこの世で一番愛する物と出会えると信じて、毎日懸命に働いていた日々はもう遥か彼方だ。それどころか、自分の行動は、端的に言ってしまえば氷柱の破壊である。馬鹿みたいに、いつかあの美しい姿を拝めると信じて、好きでもない汗を流して。

 (あんなに美しいんだから、監督者が見つけないわけがないだろう。)

素人目、――――――そう、生まれたばかりの私でも見つけられたのに、いわば氷柱のエキスパートである者達が見つけられないわけがないのだ。それでも、こうして何百年に一回はあの氷柱と出会えることを願って、青の氷原に来てしまう私はきっとどんなラルムよりも愚かだ。何千回ここの空気を吸ったって慣れることはない。絶対零度の風が喉を通る痛みと、目から伝おうとしても凍ってしまう私の涙は、自分の首を絞められているのと同じくらいに私を追い詰める。しんしんと降り積もる雪が、自分の長い睫毛に乗った。

「ひどいほど、寒いな。青の連中はまだこんなことを続けているのか。ま、仕方ないか。そうでないと職を失う青のラルムは山ほどいる。」

緑の連中に早めに裁縫や服飾を習っておいて良かった。共に寝た女性の数は誰よりも多いだろうから、服についての話も多く聞けた。どんなタイプの服が好きだとか、どんな服が中央街には少ないだとか。僕に似合いそうな服だとか、そういう話も聞けたから、男用も僕に似合いそうな物を考えれば、それを買ってくれる客もいた。そんなこんなで服飾でお金を稼げるから、私はもうこんな仕事はしなくていい。しなくていいのに。

(私はまた此処に来て、傷ついて帰っていくんだね。)

過去にもやっていたから、連中がどのくらいの時間に帰っていくのかはたいていわかる。ちょうど、いなくなりそうな時間を狙っていたのだが。

(ちょっと、早すぎたかな。雪も降っているし帰っているものだと思っていたのだけれど。)

中に入っていくと、見たことのない青年が立っている。見れば、ほかの作業員も自分が来たのと違う方向から帰っていくところだった。そういえば、自分が働いていたとき、監督者が最後まで残っていた記憶がある。もしかして、監督者が自分の時とは違うのかもしれない。共に働いていたラルムの中にもこんな顔は見たことがなかったから、自分がやめてから、生まれた子なのかもしれない。そうか、そんなにも時間が経っていたのか。新しく入った子が、監督者になるまでの時間が。

「…………もう、一万五千年も探しているのか。」

きっと大陸の人間が聞いたら言葉にならないほど遠い時間なのだろう。それでも、あの氷柱にあった感動は昨日のことのように思い出せるんだから、ラルムは“悲しい”のだ。

そんなことを考えて歩いていたら、思わず青年の十歩先までに来てしまった。相手が気づいているのか気づいていないか分からないけれど、ここから彼を通り過ぎて行くのはどうにも難しい。

「こんにちは。もう雪が強くなってきているから、君も帰ったらどうだい。真夜中ワタシになってしまったら、前も後ろも、にっちもさっちも行かなくなってしまうよ。」



【最初から姉弟の邂逅はやめておくことにしました。拙い文章ですがよろしくお願いします。】