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Re: 【中文推奨】かみさまのラルム【参加者募集】 ( No.65 )
日時: 2018/02/04 23:39
名前: 宝治  ◆wpAuSLRmwo (ID: fQkNQwJA)

>>64

【青の塔/ゼフィール】

「――あ、ごめん」

ゼフィールはミッドナイトの怪訝そうな問いかけで我に返ると、慌てて自分のグラスを相手の方へ寄せた。チリン、硬質な音が二人の間に小さく響く。
そこで改めて、対面に坐する彼の姿を注視してみる。自室から戻ったミッドナイトの服装は、シックな黒を基調としていて、大人っぽい彼にぴったり似合っていた。まさに真夜中の彼だ。
我が身を振り返ってみれば、ちょっと毛玉が立った厚手のセーター、裾がほつれたズボンという冴えないいでたちである。
服は着れりゃ十分だと常日頃から豪語するゼフィールだが、ミッドナイトの粋な装いを見て、お洒落について教えてもらいたいものだと気まぐれに思ったりもした。
ただ残念ながら、そんな軽口を叩けるほどに二人の仲は進展していない。普段は口数の多いゼフィールだが、青の塔の先輩を前にして少し緊張してしまっている。
自然と、話題は目の前に広がる食事へと移った。

「……急に温かい場所に来たもんだから、ちょっとぼーっとしてるみたいだ。……赤ワイン、頂くね」

すんなり唇に導かれる赤。渋みを抑えた優しい飲み口、続いて鼻孔を通り抜ける爽やかな果実感。後味は微かに甘く残り、ゼフィールの舌はその余韻にしばしの間浸った。
仕事仲間のあいだでは、ウォッカのような度数の高い蒸留酒が特に好まれていた。皆、酒の味を楽しむためというより、体を温めるために酔う必要があるのだ。
だが、ミッドナイトの持ち寄ったこれは、もっと複雑で、快楽的な意味を持つ酒だ。続けざまにもう一口飲む。体の中からじんわりと幸福感が押し広がってゆく。
グラスに残った赤ワインを無意識にゆらゆらと揺らしながら、ゼフィールは自分について話そうと思った。

「僕には所属する塔の異なる姉がいるんだ。ヴェールニルという名前で、ゼフィールとは色も性格も何もかも正反対。ちょっと――いや、かなり抜けてる人だから、その人の心配事ばかりが頭の中をぐるぐる回ってしまうんだ。さっきもそれで変に黙ってしまって」

ゼフィールは情けなさそうに笑った。

「……会うたびに家に一緒に住もうと言われるんだけど、それを5000年くらい断り続けてる。お互い、姉弟以外の世界を持つ必要があると思うから。きっと一緒にいたら、姉も僕も自分たちのことにかかりっきりになって、小さな世界しか知らないまま何万年も生きることになる。それってつまらないよね。
僕は僕が知らない色々なことを知りたい。僕の持ち合わせない感覚や価値観を持った人と話して世界を広げたい。だからミッドナイト、君のこともたくさん知りたいし、僕が知っていることはなんでも教えてあげたいと思ってる」

自嘲気味の話し声が次第に熱を帯びていく様を自覚しながら、ゼフィールはそれを止められなかった。
……赤ワインはその色があらわすように情熱の飲み物、なのかもしれない。