オリジナルなりきり掲示板
- Re: 【中文推奨】かみさまのラルム【参加者募集】 ( No.66 )
- 日時: 2018/02/05 13:30
- 名前: ゆきしま ◆BV.fqgxxRU (ID: Q8MrRCmf)
>>65
【青の塔/ミッドナイト】
控えめの乾杯の後、私はそのままグラスを口から遠ざけた。お酒を薦めた以上、相手がこの味が得意かどうか、多少の心配はあったので反応を見ていたが、どうやら楽しんでもらえているようで、相手が半分ほど飲んだところで自分もようやくワインに口をつけた。一人で飲む分には気にしないのだが、人に出すには少し冷やし過ぎたかもしれないと不安になっていたところだった。しかし予定より随分早く帰ってきたものだから、冷蔵庫に入れてから一時間を少し過ぎたくらいだった。そも、ヴィンテージが入っているわけでもない、自分自身のこだわりも薄いような、数日前にぱっと店で買ってきたようなものだから、そこまで味に期待していたわけでもないけれど。
(でもよかった。十分美味い。むしろいつも私が適当に飲んでいる物に比べたら天と地の差だ。)
一人の夜に凍え、寂しさに開ける安すぎるようなワインとは違った。それに、今日は二人だ。昔のように埋め合わせの愛なんかではなく、今日は好奇心に満ちたものだ。そこに愛なんてものはないけれど、そこには毛布もかなわないような暖かさがあった。
暫く葡萄酒を楽しんでいると、ゼフィールの口からポツリポツリと言葉が出てきた。彼に姉がいること。その姉とは所属する塔が異なり、同居の申し出を五千年も断り続けていること。ただ、私にとって問題はそこではない。彼の姉の名前に聞き覚えがった。たしかに、私が知っている人物だ。
「ヴェールニル…………。」
私の頭に言葉が反芻される。あれは何千年前だったか。いや、そんなことをどうでもいい。
“大抵の嫌なことはすぐ忘れられるのに、一個だけ、私の中に渦巻く黒雲がいつも私を責めるの。今だって、こうしてその黒雲を振り払おうとする私にナイフが向いているのです。ごめんなさい、私を私が殺してしまう前に、今日は帰りたいの。”
何人目の夜のお供だったかは知らない。いや、彼女は真夜中と一体にはならなかった。天蓋の下にいた私の手を取りながら、私の愛を拒んだ女性だ。覚えてる。彼女の黒雲というのは、まさか。
(この子のことだったか。)
黒雲は、そのまま話を続ける。どうして彼女と共に生きることを拒んでいるのか。そしてその理由はまっとうな物に思えた。天涯の下の私のもとへ歩いてくるだけでも花瓶を倒し、誤ってランプの火を消した彼女だ。彼の心配も決して杞憂なんかではない。
「私も、もっと君のことが知りたい。君と、君の姉のことを。」
きっと、彼にはヴェールニルと私が知り合いなことを話さないほうがいい気がする。ましてや、ヴェールニルが彼を想って開けた穴を、私で埋めようとしたことは決して話さない方がいい。暗闇の中で涙を流した彼女を追いかけることもせず、一人で帰らせたなんて知ったら、きっと彼は私にテーブルの上のナイフを胸に突き立ててしまうような、そんな気がしたから。
「ねえ、私はね。早速だけれど君に一つ隠し事をしているんだ。いつか、私と君が今以上に親しくなったら、私が君にこの秘密を話していいと思う日が来たら、それを伝えるから。これから仲良くしよう。そう、まずはお互いの好物なんかを知ることから始めよう。」
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