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Re: 【中文推奨】かみさまのラルム【参加者募集】 ( No.70 )
日時: 2018/02/08 23:39
名前: 宝治  ◆wpAuSLRmwo (ID: CwTdFiZy)

>>66

【青の塔/ゼフィール】

「うーむ、さすがのミッドナイトだ。今のはまるで口説き文句のようだったよ。僕が女の子だったら今頃恋に落ちてただろうね。
そんな意味深な台詞を言われるとますますあなたのことを知りたくなってしまうな。……どうやらあなたと親しくなる他に秘密を暴くすべはないようだし」

芝居がかった口調とは裏腹に、ゼフィールは内心で思案している。
彼の言う秘密とは何に関する事柄なのだろう。”ヴェールニル”の名に微かに反応を示した気がしたが、もしかすると……。
いや。ゼフィールは自らを強く戒める。下世話な憶測は自身の品性を著しく損なう行為だ。
ミッドナイトが今話すべきではないと判断したのなら、ゼフィールはその意思を尊重するだけである。二人の間に灯りかけた親しみの感情を摘むことだけはしたくない。
彼が繋いでくれた暖かな会話の灯火を絶やさないように、ゆったりした気持ちで言葉をつむぐ。

「好きなものは、そうだな……うーん、沢山あって一言では言いにくいよ。――例えば食べ物だったら、ほら、今日僕が持ってきたサラミ」

ゼフィールはナプキンで手指を拭いてから、棒状に長いサラミを取った。表面には種々のスパイスがまぶされ、香草がふんだんに練り込まれているものだ。
ナイフで手際よくスライスさせれば、白い平皿にずらり。薄く輪切りにされたサラミの断面が並ぶ。

「これは大陸からの輸入品なんだけど、少し前と比べたら随分と味がよくなったし、防腐処理の技術なんかも発達してる。
人間かれらの技術はすごいね。たかだか数十年の寿命で、なんでも工夫して作り上げてしまうんだもの」

皿の上の一枚を手にとり、しげしげと観察する。香辛料と肉とハーブの匂いが食欲を誘う。

「食べ物に限らず、大陸では数え切れないほどの品物がたくさん出回っていて、新しいものが毎日のように出ては消えてゆくらしい。目まぐるしくって忙しくって、でも飽きない。ずっと見てたくなる」

ディユー・ラルムが一つの氷柱だとしたら、人間は一粒の泡沫なのかもしれない。
不変で永遠に美しい我らと、一瞬の輝きを残して去る彼ら。
海辺に寄せては引いてゆく白波は、泡の一粒から構成されている。その泡がはじけて消える様をただひたすら観察する子どものような心持ちで、ゼフィールは人間の営みを見つめている。
次の瞬間どこかに消える不安定な存在だからこそ、いつまでも目を離せない。

「多分、珍しいものとか、移ろいゆくものが好きなんだろうな。だから、島の外のことを考えるのは僕にとってとりわけ楽しいことなんだ。
……お次はあなたの番だね、ミッドナイト。好きなものはなんだい。もちろん氷柱についても、それ以外のことについても沢山聞かせてほしいな」