オリジナルなりきり掲示板
- Re: 【中文推奨】かみさまのラルム【参加者募集】 ( No.74 )
- 日時: 2018/03/21 19:32
- 名前: 宝治 ◆wpAuSLRmwo (ID: fQkNQwJA)
>>71
【青の塔/ゼフィール】
死があるからこそ生に価値がある。
これは人間という種族が彼らの短命という定めについてどうにか自分を納得させるために思い付いた言い訳だ。
言い換えれば、死ななければ生きてる意味はない。……ラルムからすればあまりいい気はしない文句である。
「五十年しか生きられないなら、ね。……同じような問いを、僕は今までに何度も自分自身に投げかけているよ。もし人間に生まれていたら?なんて。
でもたどりつく答えはその時々によってバラバラで曖昧なんだ。五千年も同じことを考えているのに、ちっともまとまらない」
自身の両手の甲をじっと観察してみる。ディユー・ラルムの名に恥じること無い均整の取れた造形だ。
幼子のようなきめ細かな肌質に、ほっそりとした指が仲良く交互に組まれており、どんな重労働を重ねても決して節くれ立たず、日に焼けてもシミ一つできない。
髪色と同じく青紫の爪はやや深めに荒っぽく切られているものの、手入れをすればさぞや、と思わせるものがある。
かつて見た人間は自分の百分の一にも満たない年齢にも関わらず、ゴツゴツと荒れたシワだらけの手を持っていた。
そしてそれは使い物にならないほど脆く、弱く、震えていた。
「おそらくは、僕が“老衰”という現象を理解できないからなのだろう」
テーブルにはサラミ、ワイン、温かい料理の他に、部屋から瓶ごと持ってきたドライフルーツもある。
蓋を開けて逆さに振れば、コロコロと紙ナプキンの上に転がるレーズン、アプリコット、イチジク。
茎や枝からもぎ取られた直後は、どれも果汁たっぷりの艶やかな一粒だったに違いないが、今やどれも例外なく水分が損なわれ、表面は乾燥して無数の皺が寄っている。
(老いとは案外、ドライフルーツみたいなものだったりして)
本質には至らない例えだけれど、分かりやすい。などと考えながら、レーズンを二、三粒まとめて口に放り込む。この噛むほどににじみ出る甘酸っぱさは、早熟の生果では味わえない。
ミッドナイトのワインで口直しをしつつ、言葉を連ねる。
「最初の四十九年間は、運命を嘆いて泣いてくらすかもしれないし、逆に割り切って毎日酒を飲んで面白おかしく過ごすかも。もしくは泣いたり笑ったりを毎日交互に入れ替えるか。今よりもせっかちになるのは間違いないね。あはは、本当に想像が付かないや。……でも、最期の一年間でやることは決まってる」
いたずらを思いついた時のような笑みが口元に広がった。
「親しい人の前から姿を消す。……僕がこの世から居なくなったことを悟らせないために。西風のように、どこかで呑気に旅してるだろうと思わせておくんだ。特に姉にはね。……僕が死んだと分かったらあの人、どうなるか分からない。後追い自殺なんかされたら堪ったもんじゃないもの。あの世でも姉弟仲良しなんて」
――ああ。違う。
五十年という短命であっても、五千年でも、五万年生きたとしても、きっと自分は同じことをするだろう。
死ぬ一年前に、きっと自分は姉の前から居なくなる。
(2018.03.21追記 千分の一にも満たない~→百分の一にも満たない~
……千分の一やったら5歳児やないか!!恥ずかし!)
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