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Re: 【中文推奨】かみさまのラルム【参加者募集】 ( No.81 )
日時: 2018/03/24 22:11
名前: 宝治  ◆wpAuSLRmwo (ID: fQkNQwJA)

>>81

【青の塔/ゼフィール】

「恋が水晶玉というのなら、僕のそれは変化が目まぐるしい百面相だろうな」

稚気溢れる少女と手を繋ぐだけの関係、別塔の住人との往復書簡、成熟した女に身を委ねた揺蕩うような日々、酒場のカウンターの隣客と過ごした夜。
一通りの型式は通過したと思うし、楽しみもしたが。
ゼフィールは少年と青年の狭間を彷徨っている。小柄な身体つきとあどけない顔立ち。その未完成な器に注がれた魂は、同じく未熟なままいつまで立っても子どもっぽさ残っている。
色事に関しては興味がないわけではない。だが、互いを求め合う渇きにも似た情熱に身を焦がすような恋はかつて一度もないのだ。

「どうやら神様は僕を恋愛に深入りできるようなラルムにつくらなかったようで、特定の誰かに激しく心を揺さぶられることが無い反面、死にたくなるほど辛い悲恋も経験したことはないんだ……おそらく」

『おそらく』と付け足したのは、話の途中で何かを思い出しかけたからだ。女と自分が向き合って泣いている。……だけどその時の気持ちは、忘れている。

「恋の最後には涙がつきものだもの。当人には身を引き裂くような悲劇であったかもしれないが、それは誰にでも起こる凡庸な出来事。耳を塞ぐほどでは無いよ」

テーブル上の空皿とワインボトルが夕餉の終わりを告げていた。
ずいぶん長い間語り合っていたようだ。
『そういえば』『ああそれは』『わすれていたけれど』『あのときたしか』『じつはね』
真夜中の問いかけに答える内に、見えなかった自分がいつのまにか輪郭を形作っていく。

「こんな遅くまで話し込んだのは久しぶりだ。付き合ってくれてありがとう。結局ミッドナイトの秘密は分かったような分からないような感じだったなあ。でも……貴方との会話は自分の内側を眺めることに似ていた。今まで僕は外にばかり眼を向けていたけれど 知らない世界は自分の心にも広がっていたと、貴方のおかげで気づけたよ。ありがとう」

日中、部屋の中から硝子を見ても外の風景を映し出すばかり。
硝子に映る私自身を見たければ、真夜中ミッドナイトが良い。
静かな暗闇が、些細な光をも際立たせるからだ。

「ねえ、ミッドナイトは服の仕立てを生業としているんだよね。一つ注文をいいだろうか。
姉宛てに、洋服を一着仕立てて送って欲しいのさ。たまには姉孝行しないと……ってまあこれも気まぐれなんだけど。
暇な時でいいし、ワンピースでもシャツでもドレスでもなんでもいい。サイズ……も適当でいいからさ。ミッドナイトの好きなように作っておくれ」

そうして、ゼフィールはゆっくりと席を立った。