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>>38

「あああ、すんません！」

今度は『遠い』と言われクリスはまた慌てた様子を前面に押し出し、エウラへと駆け足で近寄った。
そして似合っていると言われると、クリスの顔から『慌て』があっという間に消え、代わりに無邪気で嬉しそうな笑顔が浮かぶ。

「仕事があるならお安いご用ッス！」

エウラの後ろを歩きながらそういうクリスの顔には、先ほどに引き続き無邪気な笑顔が浮かんでいた。
前述の通り、クリスは組織に入るまで誰からも必要とされずに生きてきた。そんな彼女にとって、仕事を頼まれるという事は――必要とされるという事は、この上なく嬉しい事であった。
けれどまあ、その嬉しさに浮かれてしまっているからか、はたまたエウラの背中をじっと見ているからか、歩む先のタクシーにはまだ気が付いていない様子ではあるが。