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「む……仕方ない……じゃあ食堂いこ」
　撫でられて亡き親もこんなことをしていたのだろうか、と凉はわずかで幽かな郷愁に浸る。お返しの言葉に少し頬を膨らませるも、アレクセイだけでなく自分も腹が空いていたらしく素直に従った。凉が自身で言葉にしなければ、彼女の空腹や苦痛に周りが気づくことは恐らくないだろう。それが彼女の、この鬱屈とした組織の中で他人に負担をかけない一糸いっしの配慮だった。
　凉は基地の中に足を踏み入れると硬いコンクリートに足を押し付けて食堂に向かう。早朝から少し時間も経っているため機関の料理人や、仲間の大半が起きている頃だろう。食堂に近づくごとに人の声と調理をする音が聞こえてくる。
　食堂につくと案の定、朝には閑散としていた席は仲間たちが占領していた。厨房から離れた端の方だけが空いており、大食いの男たちは前の席で厨房に大量の注文を投げ掛けていた。