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　～Aleksey=Paley～

　「最優先で捕まえる必要はない」との言葉に、だよねとアレクセイはうなずいた。
　伊達に脱走して各地を走り回っているわけではないのだ、彼は様々な情報を持っていた。

　無邪気で明るいだけの少年、実際彼はそう見られることが多いが、無邪気なだけではこの世界を生きられない。彼の中には狡猾で獰猛な一面もあった。
　彼は心の底の獰猛さを、一瞬その笑みに混ぜた。

「まぁ、どうせ居場所を変えても、僕には全てわかっているんだ。何をしても無駄だね。僕に見つかったのが運の尽きなのさ」

　町を歩けば本当にたくさんの情報が手に入る。小さな下らないうわさ話にも得られる情報は多いし、自分の足で歩いて行くから地形は勝手に頭に入る。トラブルに巻き込まれそうになったって持ち前の素早さを生かせば簡単に逃げられる。それに彼は警戒を抱かれないから、情報収集にはもってこいの人材だった。

（僕が脱走してもあまり目くじらを立てられないのは、きっとそんな理由かなぁ）

　そもそも彼みたいな少年を、一体誰が疑うというのか。

　相変わらずお腹は鳴っている。「涼を食堂に連れて行け」と氷吹さんは言ったが、彼は朝食を済ませたのだろうか。もしも済んでいないのならば、三人で一緒に食べたいなとアレクセイは思った。
　だから、言った。

「そうだそうだ、氷吹さん！　朝食がまだなら、僕らと一緒に食べようよ？」

　人数は多い方が、楽しいに決まっているから。
　その顔からは先ほど見せた獰猛さは消え失せて、ただただ無邪気さのみがあった。