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（････聞こえてない、のかな。）

暫く待っても返事がない為、声のボリュームをあげ、「すみませーん！」と叫んでみる。脳内で匂いを解析しても、やはり前と同じ匂いだ。多分、もう少ししたら俺は俺ではなくなるのだろう。それなら、それならば。唯一の知り合いである彼女等と、少し位話したい、だなんておもってもいいんじゃなかろうか。

（奥に居るのか････？）

奥を覗くのはプライバシーの問題で気が引けるし、確実に会えると決まった訳ではない。ただ、あの時飲んだ茶と同じ匂いと、別の種類のもののにおいがする。もしかしたらあれは市販のものだったのかもしれないし、ただ似てるだけかもしれない。それでも、感情がわからなくなってしまった俺には、優しすぎた。俺を見てくれた。”俺”という器にいれられた、彼を見ているのではなかった。彼女達は、”俺”を見てくれた。人間にとっては当たり前の事なのだろうが、アンドロイドは器であり、自我を持たない。俺は、器だったはずなのに。”俺”ができてしまった。その”俺”を見てくれた彼女等に、”俺”でなくなる時位は、見てもらったっていいだろう？