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Re: 放課後オカルティカ ( No.61 )
日時: 2018/08/11 19:41
名前: 荏原 ◆vAdZgoO6.Y (ID: YxL1EeSq)

>>「は、はひぃ!ごめんなさいごめんなさい。悪気があってしてるわけではないというか、うっかりというかなんというか…」
「(ん、思ったより素直)……」

 てっきり強情に奪い取ったことに文句をつけられると思っていたが、これでは悪者の様だ。取り返した本を懐に入れると、思わず顔を背ける。
 とりあず本に損傷は見られないことだし、まあ反省してくれるというなら彼らの利用禁止処分はまだまだ先になることだろう。
 ……影井以外の人物はどうなるかは不明だが。

 了子は伊悠が望んだとおり、目撃情報についてを聞き出そうとしてくれている。やはりこういった時に行動力のある人物と言うのは頼りがいがあるなと一人思う。
 この勢いならば、日が沈み切る前には上手く物事が進むかも──

>>「僕が彼女を見たのは去年の暮れ。雨の日でした。旧校舎の裏で儀式用の薬草を摘んでいたんですよ。ちょうど今みたいな夕方だったかなあ。こう屈んで地面に生えてる草を摘んでいて、なんとなく傘を持ち直したところ、見えたんです」
>>「見慣れない女子生徒の足が!!あのスカートはウチの今の制服じゃありません。しかも雨なのに傘を差してなかった!旧校舎に現れる意味もない!間違いなくあれがヨルガオ様だ!」

「(訂正、無駄足もいいとこだった)」

 自然とため息が出そうになるほどの落胆。だが同時になっとくの感情。人は「理解しがたい」現象を目の当たりにするとそれを超常のものと考える傾向が強い。
 例えば、今回の手紙だって伊悠は「誰かのいたずら」として、了子ならば「解決するべき謎」と捉えただろう。だが影井の下駄箱にそれが入っていれば、彼は「非生物的存在であるヨルガオ様からのコンタクト」と素直に受け取ったはずだ。

 あくまで思考の問題、決して彼がデマを広めようとしているわけではないはず。

「(……そういえば禁忌、彼は引っかかってないのかな?)」

 ふと、愚弄の禁止。おまじないの最悪の結果。その二つを思い出す。特に後者であれば、オカルト研究を銘打つ彼らが試していないとは思えない。
 その問いが浮かび上がり、形を成す前に別の疑問が思い浮かぶ。

「(──旧校舎の裏で、薬草を摘んでいた?)」
『旧校舎に面した裏庭には野生の夜顔が群生しているから、一つ蕾を摘んで来る』

 彼の行動が、栞の言葉をリフレインさせる。もし、仮に、だ。と伊悠の思考は一つの仮説を生み出した。
 たどり着くまでの時間はごく僅かだった。了子の呆気にとられた発言が誰かが廊下を駆ける音にかき消され、その音さえも消えるまで。

「……影井さん、ヨルガオ様のおまじ──」
>>「おやおや、また新たなお客様が現れましたねえ。どなたか存じませんが、いらっしゃいませ。僕でよければ知っていることをなんでもお伝えしますよぉ」

 了子に伝言を伝えるのも忘れ話しかけようとした言葉は、部屋の外に意識を向けた彼の言葉によってかき消された。