オリジナルなりきり掲示板

Re: 太陽が死んだ【募集中】 ( No.45 )
日時: 2019/03/19 18:49
名前: 榎@ENOKI (ID: qToThS8B)

>>43

「写真集かぁ。いやいや、記録として残ってるだけでも十分だよ。色褪せたものでもそれはそれで味があるし……そう言われてみれば、最近の写真集でも植物がメインのはよくあるけど、季節がテーマのものは見たことないな…?」

縮こまった姿勢を直す。それから、ナーシャの仕草につられて首を少し傾けて、芯をしまったシャーペンで顎をとん、とんと叩く。桜の解説を載せた図鑑を見つけたとき、曾祖父のもので修繕はしてるけど乱雑に使わないでねって母親に注意されたっけ?俺って小さい頃からうっかりで壊すことが多々あったから、図鑑の強度とか関係なく注意されただけかもしれないけど。

「ネットなら写真や動画が残ってる……と思うんだけど、色褪せてる写真でも、それはそれで見てみたいな。なんなら、オールド・スプリングって銘打って新しいジャンル開拓、してみたいなあ。できるかわかんないけど……」

ファッションは大衆に共有されてこそ価値を持つもの。そうじゃなきゃいずれ廃れる。——デザイナーのひよっこだったころ、父親が俺のデザイン案をチェックするときにいつも愚痴っていたフレーズを思い出す。今なら記録に残すのは簡単だし、処分さえしなければ記録は残り続ける。でもデザイナーとしての願望は自分のデザインが多くの人に届くことで、俺の目標は誰かの“好き”を増やすこと。正直な話、父親の意見は納得するけどやや反対の立場だ。
だからこそ、今日ナーシャに俺のデザイン案を見て、一緒に考えてもらって、桜モチーフのファッションに興味を示してくれただけでもめちゃくちゃに嬉しい。会議で通るように頑張らなきゃ。
にしても……あんなに綺麗な桜があまり知られてないのはなんでだろう。ここらで見かけないから知られてないだけ?いやでもネットで手軽に拡散できるのに?不思議だなあ……。



「えへへ、そういってもらえて嬉しいよ」

こっちを見て笑ってくれたナーシャの姿に安心する。サリャーヒのブランドを好いてくれて、思わず頬の筋肉が緩んでへにゃりと笑みを浮かべた。

「こっちが温かく思えるのは間違ってないかも……。地方部っていつも暗いじゃん?気分が落ち込んだり、身体が冷えないように生地が少し厚めのものが多いし、見た目も冷たい印象にならないように……こう、ほわ〜って感じになるように心がけてるよ。あーでも、町の人たちが朗らかというか、明るい人が多い、てのもあるかな?」

ナーシャの口調が早くなり、その原因を逡巡するけど思いつかなかった。とりあえず引きずられないように、視線だけ斜め上に向けて、何かを思い出すような素振りで喋る。なんなら、ほわ〜って言うとき、両手のひらでふわふわと上下に動かしてみせた。

「都市部は人工の太陽があるから、薄手のものがここより多いんだよね。こっちだと、職場の環境に合わせて薄手のものを重ね着とか、上着を羽織るとかして調整するのが多い…………あ、そういや、今何時…?」

作業の話で、荷物運びの手伝いが今日だったことを思い出した。
午後から知り合いの手伝いがあるんだけど……、と言いながら慌てて腕時計か携帯がないか服のポケットをあさる。なかった。わあ、時間大丈夫かな……。

「ナーシャ、今何時かわかる……?」

両手をポケットに入れたまま、震える声で尋ねる。朝は確かに約束があったのを覚えていたし、早めに昼食とるためにせめて腕時計だけでもつけていこうと考えていたけど、今の今まですっかり頭から抜け落ちていた。