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>>45-46

「似たような境遇の人がいるとは......貴方達の世界ではどうだか解らないが、日本と私の世界を比べたら、まさに私の世界は生き地獄だね。だから......」

蓮華がそこまで言い終えた後、私はつい先程運ばれたばかりのカプチーノを一口飲んでは続きを話す

「記憶喪失になってでも生きてる事自体奇跡って事だ。更に言うと10年前はもっと悲惨だった。こうして会えただけでも、私達の世界では良い方なんだ。
そうだ、まだ名のってなかったな。私は『下川愛』だ。ここの常連になる予定だから宜しく」

実際、私は相棒と呼べる人を亡くしている。かつての蓮華にとっても大切な仲間。蓮華の失踪の少し前だから、仲間が二人連続で居なくなったのはかなり堪えた。

そこまで考えてたところで、店長が何やら持ってきて大きいテーブルに置いた

「皆して何いつまで重い空気でやってんのよ！！嗚呼もう、こういう空気苦手なの！
私の奢りで良いからこのマフィンでも食べていつもの元気出しなさい！」

「あ、ありがとう、店長さん。ならお言葉に甘えて.......んんっ！？ちょ、ちょっとお手洗い借りる！」

ひとつ手に取って食べたが、不味かった。というより口に入れてはいけないものが混入してる。私は走ってお手洗いに直行した。

「あ、言い忘れてたけど、ロシアンルーレット式で、一つだけ蓮華っちがこの前魔法で改良しようとして失敗したのを入れたけど...愛ちゃんに当たっちゃったかぁー。あ、でも他は普通のマフィンだから！」

「おいそれ大丈夫か！？何やってんだバカ店長！！！」

>>47

「＜当たっちゃったかぁー＞じゃねぇぇよ!!」

他は普通のマフィンと言えど、端から外れを引いたとなると信憑性ないな‥‥。この店長、狙う対象にしたら命狙わるぞコレ‥‥

とは言え＜出されたものは食べないと失礼に当たる＞、とばあちゃんによく言われたもんだから貰うことにしよう。

「じゃ、一つ頂くぞ‥‥」

皿から一つ取り、一口食べてみた。‥‥まぁ普通に美味い。刑事の安月給じゃ食べれなさそうな物だろうか。言い過ぎか。

――――料理には不自由なさそうね

そうだな。てか、出来なかったら喫茶なんてできない気がする。
‥‥嫉妬か？

――――脳内で雑音流しまくるよ？昼夜問わず。

意外とマジで不眠症になるんで止めろ。

>>48
(蓮華)

「啓二さん、大丈夫か...？」

店長作のマフィンを一口食べた啓二に恐る恐る聞いてみる。顔色は普通だし大丈夫そうだが。

「蓮華っちは私が嘘吐いてるとでも？酷いなぁー」

「いつぞやの紫芋タルトの件、忘れたとは言わせない！ロシアンルーレットと言いながら全部山葵入りだったじゃないか！私の好物と知っておきながらあんな事して！」

『心外だ』という顔をする店長に対し私は怒りを露にする。これが食べ物の恨みというやつだ。

「うちのバカ店長は悪ふざけというか、何かしら奇妙な事をするからみんな気を付けた方がいいよ......喫茶店の商品として出したのなら大丈夫だけど『奢り』や『プレゼント』って時は警戒した方がいい。
それと、愛は大丈夫だろうか...ずっとトイレに籠ったまま出てこない」