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Re: 【指名制恋愛】獣が食らうは恋の味【募集中】 ( No.31 )
日時: 2020/07/18 14:30
名前: 火某 (ID: DMJX5uWW)

>>29

この大通りから外れた薄汚れた安っぽい飲み屋街が結構好きだ。

何でも屋のプラカードとチラシを抱えながらネオンの灯りに照らされた街並み。点滅する看板の下で顔馴染みの女たちに軽く手を振った。
彼女はストーカー撃退の。彼女はペットの散歩代行の。彼女はちょっと口に出せないやつの。そういえばあそこのお店は何回も酔っぱらい対応をした。
何でも屋なんていう酔狂な商売を始めて何年も経ってないが、日々の営業の賜物か。近隣では名前も売れて、知り合いも増えてきた。
派手なルージュと布地の少ないスパンコールドレスで着飾った女の肩を抱く男たちや目移りする男へ我先にと腕を絡める女たちの隙間を縫って帰路につく。
華美な贅沢は出来ないが、日々の小さな楽しみを営むくらいには余裕のある生活が送れるようになってきた手応えがある。飲み屋街の人が疎らになる裏通り、その築古雑居ビル二階がわたしの一国一城だ。
扉に掛けていた不在看板をひっくり返し、営業中に掛け代えると、明かりをつけ、誰もいない部屋へ「ただいま」と声を上げる。
くすんだスチールのデスクに荷物を放り投げ、下げていたブラインドを引き上げる。窓には手書きで“何でも屋マロン”と看板を張り付けてあった。

マロン「明日は……日中に浮気の報告書、黒だったし弁護士の紹介も入れとくか……あとは、夜間にキッチンの代打か。飛び込みなければ日中はフリーっと」

顎に指を添えて明日の予定を反芻する。
休みなど有ってないような仕事だが、体力には自信があるし稼げるのは良いことだ。お金は大事だ。世の真理だ。
空いてる時間はまたビラ配りでもしようかと、何気なくブラインドの隙間からネオンの街並みを見下ろす、と。

マロン「…………おっ?」

獣人の優れた視力は便利なもので、窓の下の景色を鮮明に写し取れる。例えばうちの店のチラシを持った男が歩いているところとか。
この辺りの通りでうちのチラシ片手に足を止めて辺りへ視線を這わせる人間の目的など確定のようなものだろう。
何でも屋なんて酔狂な名前だが、まあ、言ってしまえば自営のサービス業だ。一度立ち止まると軽く衣服の汚れを払い、皺を伸ばす。そして大きな帽子の位置を調節し、傷を隠すように傾けた。
よし、と満足して頷くと窓の外を見ていた体を翻し、トタタと軽い足取りで外へ向かう。
リノリウムの階段を下りて、入り口からひょっこり顔をだした。

マロン「こんばんは。何でも屋マロンへようこそ、旦那さん!」

近くに行けば暗がりでぼやけていた輪郭がはっきりし始めた。
酒を入れているのだろう、覚束ない重心と僅かに赤らんだ顔。うだつの上がらないサラリーマンの見本のような着崩れたスーツ姿……だが、よくよく見ると彼の着ているスーツは上等なものだ。少なくともこのあたりの客層が着ているような安っぽい量産品ではない。

マロン「事務所は二階にありますよ。立ち話もなんですから、どうぞ上がってください」

さあ、どうぞ! と笑顔で男を手招いた。