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Re: 【戦闘・日常系】只、月明かりに灯されていたくて。〔募集中〕 ( No.174 )
日時: 2021/01/02 10:57
名前: 無花果 (ID: Sqek5WrB)

>>171[桂/街中]

当然ではあるが、まだ警戒はされている。天狗面だった青年は特に、だ。
しかし悲しいかなその警戒もそりゃ妥当だと言うしかない。桂が今の自分と同じことを相手にされたら「罠かな?」としか思えない。なんで敵を酒に誘った自分。数分前の自分の言動の真意は分からないし腹芸などと無縁の桂にこのあとの会話の転がし方が分かるはずもない。任せた数分後の自分。
そんな馬鹿みたいなことを考えながら、まあ向坂いるしなんとかなるかと楽観的な着地点に収めた。

「この辺の居酒屋……少し先のところに個室がある場所が確か……」

顎に指を当てて首をひねっていると黒翼をしまい込んだ青年から名前を聞かれ、完全に不意を打たれた気分で顔を上げた。

「そういえば名乗ってなかったなぁ。すまんすまん、不躾だったかね」

がりがりと頭をかきながら改めて天狗面の彼だけでなく、十字の耳飾りの青年に向き直る。
そうして右手を差出して、はたと慌てて引っ込めて着物で手を拭いて、もう一度差し出してから「握手大丈夫だったかな……」と半端に彷徨わせる間抜けな状態で苦笑いしながら答えた。

「おれはけいつーもんだ。月桂樹とかの……いや、あてつけとかじゃなくて親から貰った名前なんだけど。木へんに土がふたつ。“かつら”って書いて“けい”と読むんよ」

脊にはもうひとり“けい”がいるんだけどなどといういらぬ情報を口走りかけたのを飲み込む。どうもおっさんはおしゃべりでいかん。
親しげにというよりも無警戒が過ぎていっそ胡散臭いくらいにいつものようにのんびりと名乗った。

「短い間かもしれんが宜しく。……それで、あんたらは?なんて呼べばいい?」

>>169,>>171,>>172[玉姫/林]

毒蠍はそういうものだ、と当たり前のように言いながらもほんの少し嬉しそうにする蠱毒にくすり、と微笑みを溢した。

「素直じゃない御方だこと。そう産まれたからと言ってそう生きねばならぬことなどないでしょうに」

上機嫌な様子で気軽に言うのはしがらみなどとは無縁な獣だからだ。
人の世がそうままならないことは知っているが、蠱毒と清螺を見ていればそうも言いたくなるというもの。
そういうところも愛らしいですが、と小さく呟きながら息を吐く。
矮小で卑劣な妖狐と白蛇である結びの神、互いにこぼれそうな本音を飲み込んで、ゆるりと穏やかな笑みを以て向き合った。
そして、するりと手を揺らそうとし、はたと視線を結からそらした。
恵を洗脳しようとしていた筈の叶がぼろぼろと涙を流している。
声が、と言う叶に向けられるのは、結と清螺の諭すような言葉で、玉姫は「ふぅ」と息を吐くと叶の前に立ち、

「ひとを想う心の在り方に、間違いも正しいもありませんよ」

そう言って、行く先を見失い、涙を流し頭を抱える幼子を、玉姫は着物が汚れることも構わず抱き寄せた。
どうしたらいいのか分からないと迷子になった子供。愚かで無力な、可愛い可哀い子。

「約束したのでしょう、ずっと一緒だと。信じたのでしょう、大好きなお兄さまとの約束を。……守れなかったことが、哀しいのでしょう、苦しいのでしょう。こんなにも苦しんで傷付いた叶さまが、これ以上苛まれる必要が何処にありましょうや?」

玉姫は別に恵と叶の間にある確執のすべてを知っているわけではない。叶がどんな半生を送ったかも分からない。
だが、香になった彼は知っている。月無き夜を叶がどうやって歩いたのか知っている。
それを見れば、どんな傷を背負ったのか、大体の想像は付くものだ。

「あなたが慮るべきはあなたの御心です。向き合うべきは、あなたの傷です。傷付いてるのはあなたもでしょう、叶さま。あなたは、あなたの願いを叶えなさい」

結や清螺の言葉は正しいものだ。だが、正しいものにすくわれなかった者に、正しさだけを説いてやることなど玉姫はしてやらない。
玉姫は妖狐だ。ときに男を堕落させ王に牙剥き喉を噛み潰し国を傾けた、わるい妖怪だ。
だから玉姫に倫理などなく、故に世界のすべてが否定しても

「どんな答えでも、玉姫はそれを肯定しましょう」

そのために。玉姫は此処に居る。
柔らかく抱きしめたまま、ゆっくりと髪を梳くように頭を撫でた。