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>>79

【刹那/洞窟】

僅かに、面食らったような顔を浮かべる。今、彼は何と言っただろうか。
……いや、言葉そのものは理解できるのだが、話の内容を理解するのには多少の時間を要してしまうような。困惑に似た、何とも言えない感情が生まれたような気分に陥ったような気がする。そう思いつつも躊躇いがちに小さく息を吐いては、そばかすを撫でる手を止めて。状況を整理するべきだと、先程の相手の言葉を頭の中でもう一度再生する。彼は自分のことを雌だと言っていた。つまり自分は……彼……いや、彼女の性別を勘違いしていた、ということになるのではないか。

「──……女性、でしたか、」

相手の性別を間違えるなど失礼にあたる行為の筈だ、これは非常にまずいのではないか？　ピンチなのではないか？　そう勝手に悪いことを言ってしまったかもしれないと考えては、“どうにかしてこの場を切り抜かなければ”と頭をフル回転で働かせてみるが、この状況に即した良い言葉がなかなか見つからない。
結果、数秒の沈黙の末にそう話を切り出せば、「ああ、えっと……勘違いしてました、ごめんなさい」と返答に窮したような声で、しどろもどろ気味に謝罪を口にして