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>>10／よもつかみさま
　
　
「ホント、綺麗だ……」
　
　そう呟く彼女を見て仄かに微笑む。梓馬あいつだったら、お前も綺麗だ、なんて無自覚なままに言ったりするのではないだろうか。そう思うと彼が懐かしくなって、一瞬胸が痛んだ。口を閉ざしたまま、その痛みから逃げるように灯篭を目で追う。
　視界を抜けていくそれらから、ふっと視線を外して元へ戻す。すると彼女がこちらをじっと見つめてきていて、不思議がるように首を傾げ。そんな見るほど価値のある顔じゃない、と言いかけて、ハッと口をつぐむ。未だに癖の抜けない自分に嫌悪感が湧いてくるが、それを吹き払うような明るい声が耳を刺した。
　
「……あっ、え？　ああ、音羽さん、て言うのね！　ウチはそぷら！　天の音って書いて、そう読むんだよ～、よろしく卍！」

「あ……音羽、と。呼び捨てにしてもらっていい。そぷらが帰りたいと思うまで、よろしく。それにしても、そうか……天の音と書いてそぷらと読む、か。素敵じゃないか」
　
　にこりと笑って言うそぷらにそう返して。銀髪を手に絡ませて、シニカルな笑みを滲ませると続ける。
　
「あくまでも、わたしはそう思う。……名前は結局本人が使うものだから、第三者からはその善し悪しは表面的なものしか分からないと思いもするけれど」

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>>11／シャード・ナイト☪︎*｡꙳ 様

「あわいの民…」

彼女の言葉を聞いて、少し驚いたように目を瞬かせ。
　
「私たちのことをご存知で？　それならば話は早そうだ、私があなたに害を及ぼす存在ではないことを分かっていただけただろうか」
　
そういうなりふわりと口角を上げて、ゆっくりと口を開く。
　
「さて、もう一度……あなたの名前を伺っても？」