オリジナルなりきり掲示板
- Re: あわいをうつろう小舟に揺られ [いちいち・指名制/募集開始] ( No.37 )
- 日時: 2021/01/12 05:59
- 名前: ヨモツカミ (ID: FBVqmVan)
>>35心ちゃん
あまり頭使わずできて、TRPGのタイマンシナリオみたいな雰囲気で楽しめるのが好きで、早く返したい! と、眠くて頭回らない状態で書いたので(寝ろ)なんか変だったらごめん!
***
答えづらそうに口を開閉させた彼女を見て、やはり聞くべきじゃなかったか、と後悔するそぷら。ごめん、言わなくていいよ。そう口にする前に、音羽の真剣な声が降ってくる。
「音羽と呼んでくれると助かる。そう……わたしの名前は、産まれる前から決まっていたらしくてね」
薄く笑うような声色。それが自虐的な笑いであることくらい、すぐに分かった。
「天界という世界が、この空の上にある。俗に言う天国というやつだ」
ここは三途の川ではないらしいが、天国は本当にある、というのか。なるほど。
突飛な話でありながら、そぷらがすんなり受け入れられたのは、音羽がその類の冗談を言うタイプには見えなかったからだ。
「わたしはそれなりに位の高い貴族の、ようやく産まれた一人娘でね……『天音しかいない』『天音は特別だ』とか散々言われてきたわけだよ。誰と友人であっても、どんな夢を持とうとも、わたしは親にとって特別だから許されるって信じていた……そんなことはなかったのにね。わたしと彼らでは、どうやら『特別』の意味が違ったらしい」
そぷらは音羽の一挙一動から目を離さないよう、じっと見つめ続けた。表情の動きは殆ど無いように見えるが、その息遣いも、視線の動きも、すべて意味がある。翳る瞳と、吊り上がる口角。いつの間に強ばっていたのか、緩りと彼女の体が脱力するのもわかった。
「長々と話してしまったな……つまりね、わたしは天界も親も、ひいてはそれを意味している名前も大嫌いというわけだ。……それに見合う、それを誇れない私が悪いのかもしれないけれど」
天音という響きが羨ましいとか。一瞬だってそう考えた事実に、自分のことが嫌になる。
「音羽は、悪くないよ。……悪くない」
何かを嫌うことは、幸福なことではない。親を好きでいられないことなんて、幸せなはずがない。故郷が好きじゃないなんて、きっと辛いことだ。想像と憶測でしかないにしても、そぷらの考えはそんなに外れてないだろう。
陰った瞳や、睫毛の微動。皮肉を孕んで吐き出された言葉、声色。そこに隠されている、苦しみや、切なさは色濃く滲んで、隠せてなんていない。
きっと、私が想像するよりずっと辛かったのではないだろうか。そぷらは音羽の感情を想像して、不意に悲しくなって、泣き出しそうになる。それを必死にこらえて笑ったから、変な顔になっているかもしれない。
「あ。いや……ごめんご! その、天界とか、貴族? とか、よくわかってないくせに、こういうこと簡単に言うのも良くないよね! まーでも、『特別』って言われてたのに、意味が違ったとか、親も親じゃね? やっぱ音羽は悪くないっしょ。夢を持つのだって、友達選ぶのだってさ、例えば職業選択で魔法使い選ぶか武闘家選ぶかくらい違うし、友達だって、フレンドは強いやつがいいし、姫プしてくるやつより盾プしてくれる人とフレンドになりたいし。まあほら、その辺子供の自由じゃん。子供は親の道具じゃねえってのってカンジ? ポケモンとトレーナーの関係じゃねえんだから、ジムバッジ全部持ってようが無かろうが言う事なんて聞く必要ないっていうかって、あ……そっか、貴族ってそういう自由、ないものなんだっけ……」
歴史の授業で習った貴族というものは、戦略結婚とか、王位の継承とか、難しいことは知らないが、自由がきくものではなかったらしい。もし音羽もそれと同じような環境で育ったのなら、親が悪いとか言ってられないのだ。何故なら、そういう世界なのだから。
名前だってそうだ。ルイなんとかとか、名前がどれだけ大きな意味を持つものだったか。貴族として生まれるというのは、そぷらのような生まれとは全く違うものなのだろう。生きている世界が、あまりにも違うから。
そうであれば、何も抗うことができない。強い運命の流れの中、世間は音羽が悪いということにするのだろう。
だとするなら。音羽の心は誰が救うのだろう。
堪えていた涙が、ポロポロとそぷらの頬を滑り落ちて行く。彼女の顔を見たまま、そぷらはどうすればいいかわからなくなった。
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