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Re: 徒桜バーコード【〆切り】【色々書き足しました】 ( No.34 )
日時: 2021/01/12 19:09
名前: ヨモツカミ (ID: uh7M8TG/)

紫月さん >>33続き


「………248、それが僕の呼び名。名前は、無い」

 その言葉に、エルファバは目を丸くする。そうか、施設で育てられたバーコードは、基本的に番号を振り分けられる。名前を持たない者だっているだろう。

「……そう。私と一緒だね」

 エルファバが、少年の前で微笑むのをやめたのは、その一瞬のみだった。声のトーンにも、先程までの不気味な朗らかさは含まれていない。それに少年が気付くことができたかは定かではないが、少なくともロストはわかってしまった。
 名前というものの価値をよく理解しているヒトだからこそ、感じるものがあるのだろう。誰かが呼ぶことのできる、その音の並び。そこに込められた願いや感情。それが存在しないことの空虚。
 エルファバ、なんて。偽名を用いることしかできない彼女にも、いつか真の名前が与えられれば良い。ロストはエルファバのうしろ姿を見守りながら、そんなことを考えていた。

「本当はね、誰でも良かったの。あなたである必要も無かったし、他の誰かである必要もなかった。……でも今、思った。あなたがいいって。なんだな、運命めいたものがあるような。そんな気がしたから」

 名前を持たぬ者同士。たったそれだけのことに、彼女はなんて大げさな言い方を、とロストは思う。彼女とずっと共に行動してきたロストだからこそ、その言葉の裏を勝手に想像して、嫌気が差した。
 きっと、248と名乗った少年のことなんて、どうでも良いと思っているくせに。ヒトの心を掌握するためには、大袈裟な言い回しが必要だ。だからどうせ、エルファバの言葉に感情は伴っていない。そういうヒトなのだ。なのに、運命などという言葉を使って、幼気な少年の心を弄ぶ。実に“死神”らしい。人間の良心なんてものは等の昔に失っているのだ。
 そうだとして、ロストがそれを勝手に248に伝える気は無いし、ロストにとっても248のことがどうでもいい存在であることは同じだった。何れ避けられない別れがくるのなら、何かしらの感情を抱くことは苦痛だから。ロストは少しだけ哀れみつつも、少年の気持ちについては深く考えぬようにする。

「ねえ、248番君。もしあなたが嫌でなければだけど、私があなたに名前を与えてもいいかな?」

 エルファバはそう言って少年微笑みかけ、