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Re: 徒桜バーコード【〆切り】 ( No.35 )
日時: 2021/01/13 18:04
名前: 紫月 ◆GKjqe9uLRc (ID: w1UoqX1L)

>>34続き

 「……そう。私と一緒だね」
その言葉に、僕は顔を上げていた。薄っぺらい笑っているようで笑っていない表情を浮かべていたエルファバが微笑みをやめていた。哀し気な、何もかも吹き飛ばすような朗らかさなんて、一切なかった。
 掴んだ土を手から零していた。
 親に、誰かに愛された者が特別に貰うたった一つの一生残る宝物。カッコいい音の並び、可愛らしい名前。神に愛される、だとか信仰だとか素敵な、目を惹く名前。込められた感情や願い。
 
  一つだけ、それだけが欲しいだけなのに。手に入らない哀しさ。ぽっかりと開いた空虚。
エルファバ、はやはり偽名。けれども。偽名があるだけでも良いと羨ましく思う自分が其処にはいて、彼女なりの葛藤があるはずなのにも。辛いと思うのにも。
 「本当はね、誰でも良かったの。あなたである必要も無かったし、他の誰かである必要もなかった。……でも今、思った。あなたがいいって。なんだな、運命めいたものがあるような。そんな気がしたから」
僕が良い、と嘘でも言うこの女が。
 僕は、嫌いだ。
 「………うんめい、か」
大袈裟だ。大袈裟すぎる、脱走したのが僕であって企てていた奴らもたくさんいる。
これだからヒトはヒトって奴は、信じれないんだと。
実の親に裏切られてから考えてきた。研究員も、先輩も後輩も。全て信じられないと。

 何時か裏切られる。

 じゃり、と土をまた掴み、乾いた笑みを浮かべていれば。 
 「ねえ、248番君。もしあなたが嫌でなければだけど、私があなたに名前を与えてもいいかな?」
優しさには毒がある。エルファバの微笑みの下には何が隠れているんだろうとぼんやり思い。

 嗚呼、誰かに裏切られるくらいなら。僕が、反対に、僕が裏切る側になろう。


 「………嫌だね、名前は僕にとって大切で特別な宝物なんだよ……って言いたいところなんだけど不便なんでしょ? いいよ、与えて」
そう決めた瞬間、何時も通りすらすらと言葉が出て来てさり気なくホッと一息吐く。
エルファバに微笑して見て。