【空からは色々な物が落ちてくるのです。】
麗らかな春の日。
俺は軽いバックを片手に揚々と歩いていた。
今日は始業式で、荷物もなければ午前帰り。
まぁ教室に行ってぐーたらと担任の長い話を聞く羽目になるのだが。
然し、今日の俺は一味違う。
何故だろうな、いやぁ本当に何故だろう。
空からバナナ(皮)が降ってきた。
「――――――――ってえええええええ!?」
空から突如出現したバナナ(皮)。
それを避けようと思うが運悪く今日の俺は不慣れな靴を履いている。
ちくしょう。調子に乗って新学期から靴を換えるんじゃなかったっ!!
迫り来るバナナ(皮)を目前に最終手段を結構。
そうだ、そのまま頭を回して避ければ良い。
ナイスだ俺っ!、流石俺っ!!
腰を極限まで曲げてバナナ(皮)を避けきった。
そしてそのまま落下――――――――せず。
「え」
春の暖かな気持ちの良い風が、バナナ(皮)を押すように流れ込む。
バナナ(皮)の向かう先は唯一つ。
俺の顔面。
「はよーっ、…ってどうしたよお前? 朝からちょっと顔がぬめってるぞ」
「言うな。それ以上言ったら顔を潰す」
「何言ってんだよぬめ顔くn――――――でぎやあああぁッ!!!!」
友達の顔をこんな風に鷲掴みにするのは数日ぶりだろうか?
そういえば3日前やったな。カラオケとかなんかで。
「いってー…お前マジバカ」
「お前が言うなバカ」
「……始業式から罵倒での精神的な殴り合いはやめようぜ。まだ4月だぞ。えーぷりるえーぷりる」
「あぁ、そう」
大体始めに突っ込んできたのはあいつだろうに。
俺は悪くない。はず。
「つうかお前さぁ、バナナで滑った事ある?」
「え、何突然」
唐突すぎて分からん。
こいついっつも突然何かを言い出すから色んな意味で怖いな。
「いやぁ俺さ、マジ滑った事あんだよ。すげぇだろ、なぁすげぇだろ」
「自慢になる事ではないに一票」
「んだよつまんねぇーな、どうせバナナトラブルなんかお前にないだろー」
「いや、あるけど」
「え、マジで!?」
なにゆえにそんな驚く…。
俺って普通すぎ? そんな風に見えますかね。
「朝、バナナ(皮)が顔面にダイレクトアタックした」
「ご丁寧に(皮)までつけてくれたなおい」
しょうがないだろ、中身なかったし。
あれはあれで衝撃的だったしな、うん。
「えー皆さん、席に着いて下さい」
あ、担任が来て――――――、ない?
「あれー?何で別の先生なんすかー?」
あのバナナトラブル自慢男(略:バナ男)がいつも通り大きな声で叫ぶ。
そういえば何でだろう。いつも長時間喋っていられるあの滑舌の良い担任がまさか休みとは思えない。
じゃあ、家族がインフルエンザとか?
「実は今朝…交通事故に遭った」
マジですか。
てか…そんな騒ぎあったかな。
クラスがざわめきを起こして数秒後、先生は咳払いをして皆を沈め、もう1度机に手をつく。
「さっき意識が戻ったそうだが…先生はある台詞しか吐かない、だとかで…」
ある台詞って…助けてとか、苦しい、とかかな。
大体交通事故に遭った人って…初めに何て言うんだろう。
やっぱ怖いものだし…家族の名前とかかもしれないな。
「“バナナ(皮)を失くした”…とな」
その台詞を真顔で言う貴方も貴方だ。
…え、てか、え?
「バナナ…(皮)?」
あれ、この言葉どこかで聞いたな。
そういえば朝、頭上から変な物が落っこちてきたよーな。あれ。
「心当たりがある生徒は学活終了後職員室に来るように」
ヤバイ、ありすぎてヤヴァい。
これは偶然ですか? いいえきっと運命ですよね。
「あれー?お前何処行くんだよー?」
「あぁ…ちょっとね」
「はぁ?」
「…バナナ(皮)を語りに、行ってくるよ」
あーあ、ホントろくでもない日だよ。
朝からバナナ(皮)が降ってくるなんて、知らなかった。
まぁ知ってたら怖いけど。
空って何が落ちてくるか分かんない。
雨だったり雪だったり雷だったり。
ま、今日の天気予報は“バナナのち晴れ”だったけどね。
…今思えば、そんなに悪くない新学期の始まりだったかも。
なんちて。
*あとがき*
初めてコメディ物にチャレンジしてみましたっ。
いやぁ、ホント下手ですね(笑)
どんだけ(皮)が出てくるのか…もうホント疲れました。
意味不明な終わり方になってしまい…短編の難しさを改めて痛感した気分です。
あぁー…疲れたっ!