『壊れたエアコン』
茹だるような暑さに、私、龍崎サナは、ソファーとお友達になってました。
タダでさえ貧血気味な私に、このような暑さ、加えて。
なんで、エアコンが壊れてるってんねんっ!!
「大丈夫? 何か買ってこようか?」
折角、彼氏のラナ君が遊びに来てるのに、何も出来ません。
「ごめん、何も出せなくて……」
おでこにつけてるハンカチがもう、ぬるいです、先生……。
「じゃあ、アイス買ってくるよ。少し休んでて」
「んっ」
からからからー。
エアコンが壊れたから、超レトロな扇風機とやらを取り出して使ってる。
ウチは、パパが扇風機をドライヤー代わりに使ってるので、メンテはバッチリされてる。
けど、この時代、そんなの使うの、ウチだけのような気がするのは、気のせいかな?
そういえば……夏祭りのとき、ラナ君が可愛いきんぎょ、すくってくれたっけ。
私はすぐに紙が破れちゃって、一匹も掬えなかったけど、ラナ君、ああいうのって、得意らしく10匹くらいくれたな。あのきんぎょも、今は死んじゃって、代わりに生きていたときの映像を使って、壁のオブジェに映してる。ちょっとだけ、涼しい気分になった。
それにしても、扇風機の風、ちょっと気持ち良いな。
あーっていったら、声が震えるから、宇宙人の声ーなんて冗談良いながら遊んだっけ。
それもきっと、ウチだけなんだろーな。
ああ、暑い。ぼーっとしてきちゃった。
それに……だんだん眠くなってきちゃって…………。
気がつけば、側にラナ君がいた。
もう帰ってきたんだ。
………あれ? 涼しい?
がばりんちょって起きちゃった。
ばさりと、何かが落ちて……ああ、ブランケット?
「サナ、起きたの? 大丈夫? アイス食べる?」
「うん、大丈夫。って、あれ? エアコン、直っちゃった?」
気がつけば、さっきの茹だるような暑さも全くなくなってる。
換わりにあるのは、程よく涼しくそよぐ風。しかも凄く冷たくないんだ。
本当に程よいって感じ。
そうそう、エアコンってこうだよね!!
「あ、サナー! アイス、何味にする?」
「バニラ&クッキー!」
「オッケー!!」
冷蔵庫から、持ってきてくれたアイスは、私の好きなメーカーのアイスだった。
こういうところは抜かりないよね、ラナ君って。
「そうだ、エアコン、どうして直ったの?」
「あ、えっと……困っていたみたいだから、僕が業者呼んで直してもらっちゃった」
「でもこの時期って混んでて、なかなか受けてもらえないんじゃない? うまー♪」
「はむはむ。うん、だから、僕の知り合いに頼んでやってもらっちゃった」
その、ラナ君の知り合いって人が、微妙に気になるんですが。
「えっとその……修理費用は……」
「大丈夫、タダでやってもらったから」
「マジ?」
「うん、マジ」
いつの間にか、アイスはすっかり空になっていて。
「ご馳走様でした」
「お粗末さまでした」
互いにぺこりと頭を下げて、笑い出す。
「その様子なら、もう大丈夫だね」
「うん、元気いっぱいっ!!」
思わずサムズアップしてしまう私。
と、思い出した!!
今日の重大な目的!!
立ち上がって、ばたばたと自分の部屋から、ゲームソフトとヘッドマウントディスプレイを二つ、引っつかんで持ってきた。
「お待たせ! 今日はこれをラナ君とやりたいなって思ってたの!」
「サバイバルホラー?」
こくこくと頷く私。結構、人気のシリーズで面白いって話なんだけど。
「一人でやるのは怖くって」
てへぺろっと頭を掻く私。
「うん、面白そう。僕もやったことないし」
さっそく、ヘッドマウントディスプレイを装着しちゃうなんて、ラナ君、気合入ってるみたい。そういえば、ガンアクション、すごく得意だっけ?
「今日はパパもママも居ないし、さくっと夜なべで、エンディングまで行っちゃうわよ!」
「え? ちょ、ちょっと待って、それって……ああっ!!」
ゲームソフトを入れて、私はさっそくスタートボタンを押す。
そう、楽しいデートはこれからだ!!
◆あとがき◆
ふう、間に合ってよかった!!
えっと、別サイトで書いているキャラの外伝という感じで作ってみました。
一応、近未来です。はい。
エアコンも高性能だし、外は温暖化でめっちゃ暑い夏を想定してます。
他愛ないひと夏の思い出みたいな感じで書いてみましたが、いかがでしょう?
とにかく、大事なことなんでもう一度。
間に合って、良かったっ!!