Re: 第七回SS大会 お題「赤」 投稿期間 8/14~9/1まで ( No.357 )
日時: 2012/08/28 06:30
名前: 山田威刻◆YyoUezf27o

はじめまして。小説初心者で、スレッドをたてる自信がないんで、こちらに参加させていただきます。

【とにかく、眠れ】

 赤い。人間は、赤い。俺の視界は正常だし、世界の色だっておかしくない。だから、人間の肌が肌色をしていて、人間の髪が黒や金やその他もろもろ、カラフルだってこともわかっている。それでも、人間は赤い。赤い赤い赤い。彼らの、アイツの、俺の肌の下には、赤い血液が流れている。赤い。だから俺は、人間は赤色だと表現する。人間は、血液と臓器を入れるダッフルバック……ズタ袋にすぎない。感情、いわゆる心なんていうのは、神サマが気まぐれにつけただけ。愛だの恋だの友情だの言っている奴等は、神サマの手の上で見事転がされている哀れな子羊だ。どうして神サマは、こうも無駄な生物もとい二酸化炭素製造機を作り出したのか。暇潰し程度のことだろう。とにかく、あんな職務怠慢でクレイジーな神サマの思い通りになんて俺はならない。真っ赤な血の流れる真っ赤な人間を、今日も哀れな目で見つめながら、俺は歩く。
 真っ昼間の大通り。真っ赤な馬鹿どもは、俺を見るなり悲鳴をあげて走り去る。きゃーきゃーわーわーオユルシヲタスケテぎゃーぎゃーワタシガナニヲシタッテイウンダうわーうわー!! うるさいと思う。ゆっくりゆっくりと前に進む俺の目の前で転んだ哀れなズタ袋は、その体内から溢れる赤色に涙しながら叫ぶ。ビークワイアット!! 静かにしてくれよ。そう思って首を振る。ただし口に出るのは以下の言葉。「黙れズタ袋。てめえは悪いことなんてしてないさ。だからこそ今、あのクソみてぇな神サマから解放してやるんだろうがよお!!」ズタ袋、唖然。俺の言葉が理解できていないのかもしれない。あぁ、やはりお前も真っ赤なズタ袋か、と哀れむ。哀れなズタ袋には救済を与えなくてはならない。さあ、今救ってやるからな。降り下ろす斧。短い悲鳴と共に散る赤色。真夏のアスファルトに蒸発して消えていく。イエスオッケー、任務完了だ。これで彼は神サマから解放されてズタ袋を、めでたく卒業するだろう。おめでとう、おめでとう! 歓喜のあまり手を叩くが、ともに祝福してくれる者はいない。あぁ残念だ。
 ため息。もう少しズタ袋を救ってやろうかと思ったが、一日に10人も解放するとさすがに疲れる。ハイパーベンチレイション状態。早く帰って寝よう。明日も仕事があるんだ。【○●町連続殺人事件、犯人を探しています】ふと目に留まった電柱の貼り紙。○●町は、少し前まで住んでいたがそんな物騒な感じはなかったのだが。何が起こるかはわからないもんだな。しかしよく読めばどうやら、犯人は俺と同じく斧を使っているらしい。やれやれ、困った奴だ。斧は殺害の道具じゃねえぜ? ズタ袋を救うためのもんだ。やれやれ。まあとにかく、今は眠ろう。疲れた。真っ赤なズタ袋の掃除は、また明日でいい。

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書き慣れないんで、読みにくかったらサーセン。お題に添えたかも怪しいですが、目を通してもらえたら嬉しい。