Re: 第七回SS大会 お題「赤」 投稿期間 8/14~9/14まで ( No.364 )
日時: 2012/09/03 00:54
名前: 秋原かざや◆FqvuKYl6F6
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel2a/index.cgi?mode=view&no=561

『大好きなあなたへ』

 溶けてしまいそうだった。
 愛してるといわれて、本当に幸せだった。
 肌を重ねて、愛を確かめて。
 そして。
 私はシャワーを浴びている。
 肌を重ねたのは、初めてだった。
 太ももからつうっと、一筋の紅。
 けれどそれも、もう流されていって。
 体の火照りは、シャワーで冷やされて。

 きゅっとシャワーの栓を閉めた。
 幸せを永遠にするために、私は心に決めた。
 バスタオルを纏い、そして、新しい下着を身に着けて。
 クローゼットから、服を取り出した。
 本来ならば、私はこれから『仕事』に行かなきゃならない。
 けれど……。
 私の心は、想いは止まらない。
 大好きな、あの人の下へ。
 服を着て、駆け出した。
 彼のいる部屋へと。
 駆け抜ける間、人々が、私の姿を見て驚いていたが、かまわない。
 今日は特別な日なのだから。

 寝ている人の部屋に入り込むことは、私にとって簡単なことだった。
 けれど、そうしなかったのは、起きているあの人に会いたかったから。
 玄関の扉の前でチャイムを鳴らす。
「……どなたですかぁー」
 眠そうなあの人の声が聞こえた。
「メリークリスマス! プレゼントを持ってきましたよ」
「ふへ?」
 あの人が驚いている。
 そうだろう、なにせ、私は『サンタ』なのだから。
 ちょっぴりセクシーなサンタ服だけど、それは紛れもなく、サンタ服。
「私、あなたと一緒にいたいの!」
 彼の胸に飛び込んで、あの人の顔を覗き込む。
「あの話、本当だったんだ」
 驚いていたけれど、私を逆に抱きしめてくれた。
「僕のサンタさん、よければ、ウチでクリスマスをやりませんか?」
「はい、喜んで」
 幸せなときは続くのだ。
 これからもずっとずっと……。