Re: 第七回SS大会 お題「赤」 投票期間! 10/9まで(延長) ( No.389 )
日時: 2012/10/06 12:14
名前: あけぼの

【題名:思いの赤はいつまでも】

「アル、泣いてるの?悲しいの?」
「うっひっぅ…」
「アル、誰かにいじめられたの?」
「み、皆がっぼくのこと、悪魔って…うぅ」
「ちがうよ、アルは悪魔じゃないよ?」

少し肌寒い秋の季節だった。
泣いている僕に、君は優しく僕の頭を撫でてくれた。
それが嬉しくて、嬉しくて…つい頬が緩んでしまって。

「笑ったぁ~!」
「ありがとう…」
「どういたしましちぇ、ですわ…//」

大人ぶってみたら、舌を噛んじゃって。
顔を赤くしてとても可愛かった。
だから、僕は言ったんだ。

「ぼくとけっこん、してくれる?」
「アル…//…うん!」

そして、幼い僕たちは結婚の約束をした。
でも、

「ごめんね、アル…。あたし、遠いところにいくの」
「え、な、…んで?」
「パパが、お引越しするからって…っ」

君は泣きながら僕に微笑んだ。
僕も、悲しかったけど頑張ってさよならした。

「必ず、むかえにきてね、アル」
「うん!やくそく、するっ!」

涙で霞む僕が確認できたのは、燃える様な赤い髪の毛だった。

+*+

「おい…リチャード?」
「何でしょうか、アル様」
「何故俺はこんな格好をしているんだ?」
「それはアル様が、今年13回目のお見合いをなさるからです」
「そんな事は分かっているんだっ!」

バンッと、部屋に大きな音が響く。
職人が手間暇かけて作ったと思われる高価そうなその部屋には、キラキラと宝石やら真珠やらが、所々輝きを放ちながら埋め込まれている。
そんな部屋に大の男が二人。
一人は涼しげな顔をした黒髪長髪の男性と、その主でありこの屋敷の持ち主であるアレクサンドラ・スミス・レ・ファンド伯爵である。

「俺は見合いなどする気はないと、何度言えば分かるんだ?」
「さぁ?私には理解しがねますね」
「絶対に、見合いはしない。結婚する気もない」
「…初恋の方を待っておられるからですよね」
「っな//」
「分かっているのは赤い髪という事だけ。名前も住んでいる家も、何もかも分からないその女性を」
「…」
「きっと今頃、結婚して子供作って幸せな家庭を築いてますよ、アル様と違って」
「約束を、したんだ」

振り絞る様な、声だった。
主の切ない表情に、リチャードは一瞬声を詰まらせる。

「リチャード、町に遊びに行くぞ」
「ですから、見合いが。旦那様にしかられて…」
「お前の今の主人は俺だ。父上じゃないだろう?」
「はぁ…。畏まりましたよ、アル様。」
「お前と俺だけだ。共はいらん」

リチャードは、深々と頭を下げた。

*+*

「キャァーーーッ」

アルとリチャードは、顔を見合わせた。
細道の方から、女性ぼ甲高い悲鳴が聞こえたからだ。
正義心に煽られ、アルはリチャードを連れそこへ駆け込む。

「いや、やめて!こないでったらッ!!」
「嬢ちゃん…逆らうと怖い目見るぜ?」
「大人しくついてくるんだ」
「煩いわね!こっちはもうとっくのとうに怖い目あってんのよ!」

強面をした四人の男が、か弱そうな女性を囲んでいた。
男たちの方は以下にも闇金の取り立て人、と言った感じだ。
女性は、頭をスッポリ帽子でかぶせ、顔が見えないが、着ている服は継ぎ接ぎだらけだった。
アルとリチャードは手をパキパキ鳴らして準備運動をし、男達に殴りかかる。

「ったく。手間取らせんじゃねぇーよ!」
「きゃっ」
「おい。そっちの口抑えろ」
「怒ったわ。…手加減してやらないか…」
「「ぐぇっ」」

あっという間に、四人の男は倒れた。
そう、あっという間に。

「…一応、お礼を言っとくわ」
「一応?おい、こっちは助けてやったんだぞ」
「別にあれくらい、一人でどうにかなったわ」
「嘘つけ」

ムッと、女性が口を尖らせるのが分かった。
汚れを手でパンパンはたき、背を向ける。

「そうね危ないところをどうもありがとう私一人じゃ無理だったわね、多分」

その余りにも棒読みな感情の入ってない言葉に、アルがイラリとつかむ。

「おい、何だよその言い方は」
「ちょ、ちょっと!帽子つかまないで…あ」
「あ」

帽子の中からこぼれ出たのは、いつかみた、燃える様な赤い髪の毛だった。

Re: 第七回SS大会 お題「赤」 投票期間! 10/9まで(延長) ( No.390 )
日時: 2012/10/06 12:20
名前: あけぼの

【題名:思いの赤はいつまでも】

「おまえ…っ//」
「何よ。…知ってるわよ、この髪の色がおかしいくらい」
「いや、ちがっ」
「煩いわね!…頬っておいて」
「~~~~~~っ!…結婚してくれ!」
「……はぁ?」

黙って成り行きを見守っていたリチャードは溜息をつき、
赤い髪の毛の女性はぽかんと呆気にとられ、アルは、顔を真っ赤に染めた。

*+*

「バカですか」
「…」
「バカ何ですね、アル様」
「…」
「バ…」
「煩い!分かってるよ!」
「初恋の人と決まったわけじゃないのに、プロポーズして」
「赤い髪…」
「はぁ…」