【イカレタ正義と、 本当の罪】
__彼女は、紅い腰までの髪を振り乱し、黒い目をしていた。血痕が綺麗に見えるほどの純白のワンピースを纏うその姿は、まるで堕天使のようだった。これは、可笑しくて賢くて、悪者であり善者である、そんな彼女の矛盾した夢だけでつくられた物語である。
最初にいっておこう。彼女は、悪ではないが、正義でもない。そして、彼女の“正義”に騙されてはいけない。
私は、……正義だ。世界一の正義だ。
悪い奴を殺さないで、話し合いで平和に解決?ふざけないで。悪い奴は即座に殺れ。それが一番いい解決方法。
私の前にいる血濡れた男。お前は死んでしまったけど、それは誰が悪い?それは、お前だ。お前が悪くなければ殺されなかったの。
本当に、可哀想だな、お前は。だけど、地獄はお前には楽しいものだろ?
人を、【奴隷】と称して毎日毎日苛め続けた悪党め。地獄で叫び続けている奴らをみてお前は笑い、そして新しく入ってきた悪人にまた笑われろ。
「苦しめ、苦しめ。法に触る悪党よ」
法に触る奴を殺した私は罪人。私が殺した奴はこいつだけじゃあない。他にもたくさんいるだろう、私には数えきれないけれど。
だけど、私は自分が悪くないと信じている。私は悪くない。悪いのは、こいつら。私に殺す動機を作らせた奴ら。
ーーイカレテイル。
そうよ、そうよ。なんとでもイエ。私は、悪党。私は、鬼。人を包丁で殺す悪魔。
このもう赤黒さが取れない包丁は、私の相棒。私の正義を信じてくれたたった一人……いや、たった一丁の。
私は一生警察に捕まらない。だって、警察に捕まる理由がないもの。でも、彼らは私を追いかける。いくら追いかけても私は逃げる。いえ、逃げないわ。でも、捕まらない。ではどうやって?そんなの簡単よ。
私が消えればいいわ。
でも、本当に消えていいのかしら?私が殺してきたたくさんの人々。
それは悪党、罪人だった。いいところなんて、一つもなかったわ。だから、今私が消えたなら、悪党は増え続けるわ。
そんなの、許せない。そんなの、正義に反するわ。悪くない私が消えるのもおかしいわ。
なら、私は消えない。どうやればいいのかしら?
その答えは簡単よ。
ほら、後ろから警察が迫ってきてるわ。
さぁ、今が終わりの時よ。
私は追いかけてきた奴らに向って包丁を向けた。
「なんだ、こいつ! イカれてるぞ!!」
イカレテル?失礼な。なんと無礼な奴なのかしら。大人のくせに、大人げない。そんな奴は生きている価値はないわね。
なら、私はあなたを殺せるわ。
「You are a villain (あなたは悪党ね)」
私の前には血濡れた男。まぁ、可哀想に。
貴方はどんな悪いことをしたのかしら?それを知っているのは私と、正義の神様ね。
「Then, eternai life of evil(では、永遠の悪人を)」
そうして、終わるわ。
だけど、今日は終わらなかったみたいね。
パーン!!
恐ろしい破裂音がしたかと思えば、私の胸を弾丸が貫いた。
私の胸から鮮血が飛び散る。
「お前は悪魔だ。 俺が……正義だ」
後ろからは聞き慣れない男の声がした。
そうなのね、私は悪魔なのね。なら、生きている価値なんてないじゃない。なら、殺せるじゃない。
ーーでも、痛いわね。
こんなに辛いものだとは。
感じたことがない痛み。だけど、それとは関係ない痛みが私の心を貫いた。
私のやったこと、なにも意味がないじゃない。
私を撃ったあの男。あの一言しか言わなかったけど、全てが私には理解できたわ。
〈私は、この世には要らない〉
私の視界が曇る。やぁねぇ、これじゃ悲劇のヒロインじゃないの。
私は必要のない罪人だけれど、私は悲劇のヒロインじゃないわ。
ヒーローよ、この世界に生まれた一人目の。
「はっ、イかれた女だな、こいつは」
薄れゆく意識の中、あの男は呟いた。
イカレテイル?失礼な。これは正義なのよ。
_ 赤黒い血と透明の涙がまざり、私にはとてもステキに見えたわ。
これは、正義の結晶。
今まで色あせていた黒い空も明けた。
「俺は、正義だ」
そして、繰り返される。
永遠に、この輪廻は続く。
【END】
書き終えました! はい、おかしいです。
いみふめーです。わかってます((
罪とか、めっちゃ難しかったです……
私に、いい文章は無理、これ結末です。