【殺人と罪のシグナル】
ねぇ……
君は"殺人"のことをどう考える?
「ねぇ泉……」
僕は何時の答えは何時も
『分からない』だ
だから何時も
彼女に聞く
「何……?」
腰までのツヤツヤな黒髪に黒い瞳の少女
無口で何時も無愛想な少女は短く応える
背景には黒い点が見える
小さな点、それは僕達のいた国だ
「んと、ね……泉は、泉は"殺人"のことどう思ってる……?」
僕は彼女の威圧に少し怯えながらも聞く
「そうですね……別に何も」
彼女はそう短く答える
「へ? 何も?」
吃驚して彼女の方を向く
だって普通、殺人は怖い、とか汚れてる、とか狂ってる、とか思うはず
僕が唖然としているなか彼女は
「だって……殺人は罪深きモノだけれど……人は元々狂っているモノ……殺人をするかどうかなんて周りの環境次第、例え優しい優しい人でも……目の前でずっと信じていた人に置いていかれて裏切られれば狂う筈」
そう淡々と答える
彼女は小さいのに大人の考えをするときがある
今はそうなのか分からないが
「そ、そっか……」
「罪は罪……おとなしく償えば良い」
「でも君は……」
「そうですね……私の場合は例外です」
少し可笑しそうに言って僕の顔をみる
そして
さっきまで化け物の様に叫びもがいていた"モノ"に視線を移す
彼女の服は
まるで光輝くルビーの様に紅く染まっていた
彼女は紅い悪魔
悪魔の瞳に映るモノは
夕日で照らされた海の様に茜色に輝く血の海
そして黒い躯
「私のことを恐れるのなら恐れなさい……罵るなら気がすむまで罵りなさい」
彼女はそれだけ言い
茜色の海を歩いていった
小さな国から少し離れた場所にある草原
草原の草は赤く塗られ
地には沢山の黒いソレがありました
冷たい風が赤い赤い草を揺らす
黒いソレの中にポツンと
生きた少年が居りました
黒い髪は冷たい風に揺れ
頬には涙の跡がありました
そして彼の前には
彼と同色の髪と目した二人の人間が
未だに奇妙な声をあげ
喘いでいました
「………」
少年は目を閉じ
目の前の二つの黒いソレに
刀を突き刺しました
「ねぇ、お母さん」
緑生い茂る森の中に
丸太で作られた家がありました
同じく丸太で作られた椅子に座る少女は隣で本を読み聞かせていた女性に言いました
「何……?」
腰までのツヤツヤな黒髪に黒い瞳をしていて白いエプロンをつけている無愛想な女性が短く答えます
「お母さん、この本飽きたー」
小さな少女は頬を膨らませ、そう言います
「そうですね……では……砂漠の旅のお話をしましょうか……」
奥から黒髪の男性が歩いてきます
「ぁぁ、またアノときの話をしましょう」
「そういうの好きだね、君は」
彼の頬には黄土色の何かの跡
「はい……」
女性は本を閉じました
本の表紙には
紅い紅い血の海にいる
二人の少年少女の写真が張られていました
背表紙には
<罪深きセカイ>
と書かれていました
女性はその本を
大切そうに持ち
小さな本棚の奥にしまいました
居間にとある男性と女性がいました
隣の部屋には小さな少女がぐっすり眠っています
彼がふと言いました
「君は……罪のことをどう考える?」
女性は少しの間を空け
こう答えました
「答えは……永久に作られますよ」