『シークレット オブ オーシャン』
今日はオフだというのに、やっぱり今日も、腕時計型通信機から、エマージェンシーコールが鳴り響いた。
「全く、ゆっくり休む暇もないってか」
思わず毒ついてしまうが、仕方ない。
浦和までツーリングを楽しもうと思っていたが、予定はキャンセルだ。
ヘルメットを被りなおすと、俺はバイクのエンジンを噴かした。
『ナオト、遅いわよ!!』
ヘルメットの内側から、パートナーのユキの甲高い声が響いた。
ちなみにヘルメットにも局からの通信ができるようになっている。
「仕方ないだろ。出かけてたんだからな。で、近いところは?」
『E-32地区。そこからもう、間もなくだから、開いたハッチから入って』
「了解」
と、言っている間に目の前の道路がせり上がり、誘導口が顔を出していた。
俺はそこに愛用のバイクを滑らせると、そのまま飛ばしていった。
後ろの方で、どすんとせり上がった通路が閉じた振動を感じた。
もう少し進んでいけば。
ふわっと軽くなった。
下は奈落……ではなく、バイクごと収納するコックピットが現われる。
レーザーワイヤーが俺のバイクを捕捉。そのままゆっくりと収納された。
「ナオト、敵は海からよ」
隣には既にユキがスタンバイしている。
「海から? 面倒なことしてくれるな。まだシースタイル完成してないんだろ?」
「明後日に出来るって」
思わずため息が零れてしまう。
まあいい、閉じた天井から飛び出してきたレバーを、おもむろに握って前に滑らす。
「ダイサンダー、発信します!!」
ごおおおという轟音と共にコクピットに、凄まじい振動が伝わる。
けれど、これも慣れたもの。
かれこれ1年ほど耐えれば、こんなものどうってことなくなっていく。
「ユキ、敵のタイプは?」
「マーメイド型、ちょっと厄介よね」
「マジかよ」
マーメイド型は、外見が人魚の形をしているエイリアンのことだ。
しかもその口から発する歌というか、奇声は、人体に影響する。影響が及ぶ前に何とかしなくてはこっちがやられるって寸法だ。
「で、ソングシールドは出来たのか?」
「今日導入予定だったんだけど、その前にエマージェンシー」
「最悪だな……」
そんなことを話している内に、目の前が明るくなってきた。どうやら、出口のようだ。
ずばーん!
と、海から勢い良く飛び出した、俺たちの乗る巨大ロボット。
案の定、マーメイド型のエイリアンが、漁船を狙っている。
「そうはさせるかっ!! ダイサンダー、ウェーブスラッシュ!!」
どうやら、今日も戦わなくてはならないみたいだ。
この最低な状況下の下で。
「まあ、それも悪くはない。そうだろ、ダイサンダー?」
巨大ロボットの瞳が、青く光った。