『サザエはおやつに入りますか』
「透き通るような海!」
「照り付ける太陽!」
「躍動する水着!」
「これぞまさに!」
「「「「弾ける青春!!!」」」」
こいつら本当どこであろうとうるせーな。あと何だよその戦隊もの的なポーズは。4人だからレッド役が空席で真ん中いないけど。
「おい、真ん中に入れ」
「断る」
そこ俺の席だったのかよ。
自称『砂浜で目玉焼きを作る会』御一行が押し寄せてきたのは今日の朝6時、車を出せと言われて指示されるまま走らせると、近くの海水浴場へと辿り着いた。つーか、お前等クリスマスなんとか同盟じゃなかったのか。いつ名前を変えた、訳の分からない方向に。
「で、何で海に来た」
「海に来てやることと言えば1つしかなかろう会員番号№13!!」
「だから勝手に俺を組み込むな」
しかも微妙に嫌な番号をあてがうんじゃねえ。
「お前等のことだから、どうせナンパでもするんだろーがよ」
「サザエ狩りだ!!」
「おいこら目玉焼きどこいった」
「あれは名目上だ」
何だその名目。あとそれのどの辺が弾ける青春だ。
「何から隠れるための名目上だよ」
「某長寿アニメとの特許と著作権の兼ね合いが厳しくてな」
「ゆるゆるだろそんなの」
サザエで兼ね合いしてたら全国の漁師はおちおちサザエ漁してられねーぞ。カツオとかワカメも危うくなってくるだろそれ。
「そういうわけだから、サザエを狩るぞ!!勿論漁師組合に許可は取ってある!!存分に狩ろうではないか!!」
「そういうとこやけに綿密なのなお前等」
「うむ、何をするにも誠実さは必要だからな」
「俺には誠実さの欠片もない対応をしてるがな」
「これが君のシュノーケルだ」
無視しやがったこいつ。しかもこれシュノーケルじゃねえしただのゴーグルだし。
「さあ君のイケメンスキルでサザエを誘惑してこい」
「そんなスキルねーよ」
「役立たずめ。さっきから向こうの女性集団はお前をチラチラと見ているというのに」
「私怨を挟むな」
そんな阿呆な会話のキャッチボールをしているうちに、残りの3人は既に何かを獲ったのか、一旦砂浜に戻ってこようとしていた。変なスキルだけは熟練している。
「会長!!」
お前会長だったのか。
「おお、獲れたか!」
「ナマコです!」
「フナムシです!」
「沈没船の埋蔵金です!」
「何をしている、サザエはどうした!!」
おい、サザエなんかよりよっぽど世紀の大発見なのが1個混じってるぞ。