【正しい世界の作り方】
ある所にひとりの神様が居ました。
神様は、ひとりだけ居ました。 ずっとずっと、ひとりだったのです。
神様は退屈しました。
そうだ、何か創ってみよう。
神様は思い立つと、まず無色の世界を作りました。
丸一日かけて、ゆっくり、丁寧に。
神様は上機嫌で、明日は何をしようか考えました。 神様にとって、初めての悩み事です。
でもすぐに答えは出ないのでその日は出来上がった無色の世界を抱いて眠ることにしました。
翌朝、神様は色を作りました。 世界に、それを塗る為に。
青は海、緑は森、白は砂、それから、夜の黒。
世界は思ったよりも大きくて、神様の色塗りはまた丸一日掛かってしまいました。
でも、神様は上機嫌です。 神様は考える事に夢中になりました。
嗚呼、こんなに楽しいことが、あったのか。
翌朝、神様は世界を眺めて感じました。
嗚呼、寂しいな。
そこで神様は音を作りました。
風の音、波の音、木々の揺れる音、大地の揺れる音、雷の走る音。 それはまるで世界の鼓動のようでした。
これでもう、神様は寂しくありません。 音を聞くことが出来るからです。
色のついた世界に音が満ちる様に祈りを込めて、神様はそれは沢山の音を作りました。 丸一日かけて、じっくりと。
翌朝、神様は繰り返すばかりの世界に命を作りました。
無数の個性が、世界を彩ります。 どれひとつ重ならない、無数の個々。
ひとつひとつを、一日かけて。
日が暮れる頃、命たちは疲れたのか、だらけ果ててしまいました。
これはいけない。
神様は明日作るべき物を察しました。
生み出したのだから、僕が責任を持たなければ。
神様はそう呟いて一日を終えました。
翌朝、神様は時間を作りました。
誰も命を無駄にしないように、命に終わりを作りました。
そうして、終わってしまう命を謳歌出来るよう、命に言葉を与えました。
無色だった世界はもう、すっかり騒がしい世界になっていました。
でも、神様にとって、それはとても嬉しい事でした。
満たされた心に喧騒を聞いて、神様はその日とても深く眠りに落ちました。
翌朝、神様は少しだけ後悔しました。
神様が終わりを与えてしまったせいで、随分と世界から命が消えて居たのです。
少しだけ狼狽えて、神様は悩みます。
彼等に何を与えれば、命を無駄にせず、命を紡ぐだろう?
悩んでいる間にも命たちはどんどん消えていきましたが、日暮れの頃、神様は漸く答えを導き出しました。
空が段々と藍色に傾く頃に、神様は月と太陽を浮かべました。
命たちが、精一杯生きるようにと。
翌日、流石に疲れてしまった神様は、一日お休みすることにしました。
世界の紡ぐ噛み合わない旋律、命の綴る儚い喧騒、満たされた心。
それらを抱えて、神様はとても幸福な疲労を感じました。
長い長い一日。
何もしないと、一日は長いんだなぁ。
神様はそんなことを思いながら、疲れた体を横たえました。
相変わらず喧騒の絶えない世界を隣に、疲れた瞼はすぐに落ちました。
翌朝、神様は世界を眺めて驚きました。
そうしてとても悲しい気持ちになりました。
いつの間にか世界に神様の居場所はどこにも在りませんでした。
長い長い一日の間に、命たちは神様を忘れ、武器を手にして、お互いに醜く争って居たのです。
神様は必死に世界を元に戻そうとしましたが、命たちは手にした武器で神様を脅かしました。
嗚呼、どうしてこんなことに。
悲しみに暮れた神様は、大粒の涙を流しました。
涙は世界に落ちて、色を奪い、命を押し流し、音を掻き消してしまいました。
そうして、ただ無色の世界ばかりが残ったのを眺めて、神様は漸く知りました。
――翌朝、世界の在った場所には何も在りませんでした。
神様も、無色の世界も、涙のあとも。
Fin.
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ども、ご無沙汰しております。
たろす@です。
えー、ユーザー主催最後の大会、と言うことで参加せねばと思い、執筆して参りました。
いやー、詰まらん話になりましたな←
お題を見た瞬間に題材とかストーリーとかは思い付いたのですが、何度書き直しても読んでいて詰まらない。
多分6回ぐらい書き直して今に至るのですが、結局あんまり面白くないですねw
オチはですね、神様は暇潰しに世界なんか作らずに、自分を消してしまう事が一番幸せだったんじゃないのかな。
それを最後に悟って、自分も含めて全てを『無』にしてしまいました。
的な話です。
ちなみに、神様が浮かべた月と太陽には「雄と雌」と言う意味があります。
蛇足ですねww
であであ、こんな駄文で失礼いたしました。
ひとつずつ読んで投票する時間が取れれば投票にも参りたいと思います。