○読書紹介
久しぶりに、本の紹介を。
今回は僕の大好きな浅田次郎の作品です。
『あやしうらめし、あなかなし』浅田次郎
ちょっと変わったタイトルですが、古語として読めば意味が判ると思います。ジャンルは……一応、ホラーの短編集に分類できるのでしょうが、正直にいって『怖い』という事は七篇通してありません。どれも切なくて、妖しくて、本の幸せそのものを味わえる傑作だと読書人の誇りを賭けて言えます(笑
特に『虫篝』という短編は、その白眉と言えるでしょう。
三億円の借金に追われ、家族と共に田舎へ夜逃げしてきた男が、『かつての裕福な自分』の幻影を見るようになる。そして田舎の奇習――家々の灯りを消して篝火を焚き、稲に付く虫を火に誘い込む『虫篝』の夜、彼は村の男から似たような体験談を聴く――
『幽霊』ならぬ『優霊』物語と評される、本当にオススメの本の一冊です。古本屋では大抵、100円前後で売られてますよ。