Re: 本読みの喫茶店 ( No.316 )
日時: 2013/04/02 20:08
名前: Lithics◆19eH5K.uE6

こんばんはです。
ryukaさんより『桜』のお題を頂いた、短編を載せようと思います。
予想以上に長く、しかも後ろになるにつれて息切れする作となってしまいましたが……なお、長くなった関係上、雑談板におくのは一週間ほどにして、あとで複ファ板のスレッドに移そうと思っています。




『桜花の誉れ』

 刀折れ、矢は尽き。
 万策は元より、あれほど熱くたぎった血汐まで残らず流れ尽きた。そうして自らと敵の兵(つわもの)どもの血で重く濡れた大鎧と具足を引きずり、くるくると必死に落ち遁れた地で。
 その男、沖野佐兵衛(おきの さへえ)が見たものは、それはそれは美しい叢雲の如き桜の花だった。

「ふは、ははッ……儂は今世一の果報者か。それとも、もは此処は彼岸かの」

 あぁ綺麗だ、と心底から思った途端、総身から力が抜けてしまった。
 近くの太い桜樹の幹に組み付くようにして倒れ込み、最後の力を絞って仰向けになる。地面は昨夜の雨で泥濘んでいるが、もはやどうでも良い。抜けるような蒼穹と、高い日を遮って輝く桜花の色が目に沁みて。深く息を吐けば、それだけで気を失いそうになるのを堪え、佐兵衛はその美しい光景を焼き付けようと目を見開き続けた。

 それ以上は指一本動かせぬ、と言わんばかりの満身創痍、早い話が救いようのない死に体であった。幾多の戦場を共に駆けた愛馬も果て、数え切れぬ首級(くび)を狩った家伝の佩刀も右の手首ごと落とされた。ああ、そうか。動かす動かさない以前に『指などない』のだと思えば、何だか可笑しい。
 だが、自分のそれは敵味方を問わずに響き渡る獅子奮迅の働きであったはず。黒く大地を染めんとする騎馬の勢を眼光剣風を以て押し留め、美事、殿(しんがり)の名乗りを上げたのだ。
 今となっては戦の行方を知る由もないのが無念だが……我が主が窮地を落ち延びられ、捲土重来を期して戦に勝利された暁には。御主家を救った功により我が家名は昇り、惣領息子の重用は確かだろう。配下の兵たちの死も無駄にしなくて済む。

 ――さあれば各々方、後は宜しゅう。儂は、もはやこれまでに御座いますれば。

 自らの死を悟りながらも、佐兵衛は不思議と悪くない気分で微笑んだ。
 戦場(いくさば)で果てるのが一番だとは言え、このような極楽もかくやという桜の苑で死する事が出来るなら、それはまさしく武人の誉れというもの。心残りがあるとすれば、まだ辞世の句をしたためていない事くらいか。戦の前から死ぬ事を考えていたのではと、佐兵衛は今までどんな戦でも、『それ』を書く事はしていなかった。
 だが。もう意識は遠のき、痛みすら感じなくなってきた。句を練るような頭は回りようもない。さらに言えば甲の中に筆筒こそ持ってはいるが、そも、利き手は失われているのだ。これではいずれにせよ、今からではどうしようもないというものだった。

「む、ぅ……これは殺生な。はて、神か仏か、浄土か地獄か存じ上げぬが、少しばかり迎えを急き過ぎではないかの。辞世の一つや二つ、ゆっくりと詠ませてくれても良さそうなものを。まぁ何にせよ、書き留めてくれる者が居らねば無駄じゃろうが」

 ひとしきり文句を言ったところで、限界が来た。
 ずるり、と目蓋が落ちる。そのまさしく午睡に就くような感覚は、思ったよりもずっと優しい『死』だった。戦いの中での苛烈な死を覚悟していた身としては、なんと贅沢な話か。これは誰かれ構わず自慢したい所だが、それは叶わぬというもの。辞世の句も詠めない。ならばせめて、家の者には自分の最期の心持ちが分かるように……

「では。これより桜花の下にて、一代の末期と致す。希(こいねが)わくば、祖霊と共に護家の鬼とならん。巡り春来たりて、桜花の紅(べに)とならん。ふふ、やはり儂は果報者じゃ……はは、はははッ!」

 如何にも彼らしい剛毅な笑みを浮かべたまま、桜風を肺一杯に吸い込んで。
 ゆっくり、ゆっくりと吐き出したなり、佐兵衛は静かに呼吸を止めた。


○○○


「…………む」

 はて。自分は死んだ、のでは無かったか。
 それこそ眠りから覚めるように、佐兵衛は目を開けた。幾分かはっきりした視界には相変わらず馬鹿らしいほど青い空と、見事な枝振りの桜。と、そこまでは変わらない。
 が、妙な陰が顔にかかると思えば、自分の顔を『誰か』が斜めから覗き込んでいた。逆光で影のようになって、顔は判らない。男女の別も定かでない。しかし、その着物だけは桜の花弁を散りばめたような美しい色をしているように見えた。

「やっ、むむ?」

 正直な話、いくら歴戦の武人だとて寝起きは弱い。
 寝込みを襲うような輩は今まで滅多にいなかった上に、自分は死んだと思っていたのだから仕方がないとも言えたが。ともかく、佐兵衛は自分の顔を不躾にも覗き込んでいる影と、数秒に渡ってじっと目を合わせ続ける羽目になり……そして。

「ッ! 貴様、誰(たれ)か!」
「ひぁッ! 待った、待て……しばらく、しばらく!?」

 電光石火――腰巻に差していた短刀を引き抜き、影の頚筋に押し付けた。
 躰が壮健だったならば、迷わず一文字に頚を曳き切っていただろう。だが、こちらが吃驚するような青年らしき大声と、動かぬはずの死に体を無理に動かした事。そして慣れぬ左手であった事から、佐兵衛は寸での所で動きを止めた。

「誰か! 名を名乗れい。此処で何をしておった。儂が死んだと思って首級を狙ろうておったのか。死に首狩りは恥ぞ、童(わっぱ)め」

「あ、あぁ……待て、落ち着け、お侍さん。そんなにいっぺんに訊かれても答えられん。とにかくだ、その物騒なもんは下ろしてくれまいか。喋っただけで喉が、こう、ね?」

 ――目が逆光に慣れてくると、その風貌が良く見えた。
 多分、男である。年の頃は十六のあとさきだろう、まだ若い。整ってはいるが幼い印象の顔つきに、その細い眉に掛かるほど総髪を伸ばしていて、どうにも武人らしくは無い。見れば確かに桜色の着物を纏い、それだけでは女子(おなご)と間違えてしまいそうな雰囲気を持っていた。居ずまいにも京人(みやこびと)のような気品が伺える。故に町人とも農民とも言えそうにない、なんとも面妖な青年であった。
 だが、丸腰で危険はなさそうだ、と。佐兵衛は短刀をゆっくりと下ろし、奪われぬよう丁寧に腰巻に戻した。

「た、助かった。いやぁ、寿命が五十は縮みもうしたよ。南無南無……」

 真に、面妖としか言い様のない青年である。
 あと五十年もしたら、彼とて土の中であろうに。本気で言っているとしたら、こいつは魑魅(ちみ)か妖(あやかし)の類であろう。はてさて、これは夢か幻か。
 佐兵衛は眉を潜めつつ、どこか緊張感に欠けた笑みを浮かべる青年を鋭く睨めつけた。

「で。ぬしゃ、『何』ぞ。此処は『何』ぞ。言え。誤魔化しは無用、儂には判っておるぞ」

 そう佐兵衛が言うと、はっと青年は息を呑んだ。と思えば、次の瞬間にはまたヘラヘラと笑っている。見れば、彼の頚には一条の傷もなく、泥濘んでいるはずの地面には佐兵衛が来た時の足跡しかなかった。
 ああ、やはり間違いない。そも、自分は確かに『死んだはず』であった。ならば今、こうして横たわっている桜の苑や、桜色の青年は……

「あれ、何だ。お前様、意外と頭の柔らかい。『その躰』でまだ動ける事といい、大した御仁だね」

 にやり、と。
 悔しいほどに艶のある笑みを浮かべ、青年は自らの非実在を認めた。
 こう、真上を百鬼夜行が渡っていった心持ちがしたが、佐兵衛は持ち前の胆力で以て無視を決め込んだ。

「君子、怪力乱神を語らず、とは言うがの。多くを斬った故に判るのだ、儂は確かに先刻亡うなったとな。ならば主(ぬし)は死神か。それとも地獄の鬼か。まさか極楽の使いかの? それならば父祖殿にも会えようものだが」
「あはは、気の早い。『そいつら』が来るのは、もう少し後で。僕は、そう……これで御座いますよ、お侍さん」

 と言って、青年はやおらに斜め上を指差す。
 そこには丁度、佐兵衛の真上にあたる桜樹の梢が風に揺れていた。

「なに?」
「む、分からいでどうします。ほらほら、これ。お前様が枕にしておる根っこ、それは僕の『半身』で御座いますれば」
「は……」

 ――それは或る意味、死神云々よりもずっと現実味がない話だった。
 頭上に咲き誇る満開の桜の、楚々として美しい立ち姿。言われてみれば、それは青年の持つ柔らかで華やかな雰囲気に良く似ている。
 そして、彼は役者のように両手(もろて)を広げて躰をくるりと廻し、慇懃に礼をしながら言った。

「僕の名は『サクラ』。あぁ、僕たちに男女の別はないによって、考えても無駄で御座いますよ」


(続く)

Re: 本読みの喫茶店 ( No.317 )
日時: 2013/04/02 20:09
名前: Lithics◆19eH5K.uE6

○○

「して。その魑魅の類が儂に何用じゃ」
「これはしたり! 魑魅と言われるのは良いとして、何用じゃとは!」
 
 失礼、と言うなり佐兵衛の傍にどっかりと胡座をかいたサクラは、大袈裟に天を仰いで溜め息をついてみせた。だが顔は相変わらず、へらへらと笑っている。先ほど佐兵衛が渋々と自分の名を名乗ってから、ずっとこんな感じであった。
なんて胡散臭い。だが佐兵衛には、もう真か虚かなどはどうでも良い事だった。

「分からんものは分からん。何処ぞの黄泉の使いでないのなら、死んだ儂に何用がある」
「それはまぁ、ほら。『死んでいる』から用があるとは思われぬのか」
「余計分からんわ。お主の膝下でおっ死んだのは悪いと思うたがな、儂とて選んだ訳ではない」
「何だ、あれほど儂は果報者じゃ、とか言っておったくせに。まったく、武士とは意地っぱりばかりで敵いませぬな。佐兵衛殿、お前様も大人(たいじん)か小人(しょうじん)か分からん」
「はん、好きなように申せ。こればかりは、どうせ死んでも治らぬよ」

 今際の際に至って、いや、既に死んでからにして下らない会話であった。
 ふと一瞬でも気を抜けば、春風に誘われて直ぐに眠ってしまいそうな倦怠感。別に抗わずとも良いのだが。そうしていざ眠ってしまおうとすると、すかさず頬を叩かれた。

「しばらく。お前様よ、だから僕は用があると言うておりましょうに。勝手に召されるでない」
「勝手に、とはまた勝手な。ええい、ならば勿体付けず、早う用を申せい」

 それは横暴であろう、と。きっと睨みつけてやるなり、サクラは後ろに仰け反った。
 魑魅の類でも刃は怖いと見える。ちらちらと腰巻の辺りを伺いながら、やっこさん、妙に居住まいを正し畏まった風に言った。

「ならば申しますが」
「おう、早う」
「ご存知、我ら植生は土から糧を得ます」
「当たり前じゃな」
「ええい、茶々を入れなさるな。僕にとっては話しにくい事なのです。そう、されど、そればかりで足りる訳でもなく、こうして美しい花を咲かせ子孫を残そうと思うたれば……」
「ああ……そうか」

 ――古説曰く、桜は骸(むくろ)の上に咲く。

 そのあまりにも有名な言い伝えに思い至って、佐兵衛はようやく得心した。この場所は、かつて佐兵衛たちの父祖が戦をした古戦場だ。弔われる事もなく地に還った兵(つわもの)たちの骸が、こうして桜に淡い色を付けているのだろうか。そう思えば、その薄紅色がどこか危ういものにさえ思えた。
 ざぁ、と鬨の声のような風音が、不思議と耳につく。サクラは、次の言葉を言い淀むように俯いていた。

「つまるところ、儂を喰らいたいのか、サクラよ」
「っ、違う、僕とてそうはしとうない! しとうないのです!」
「…………」

 急に大声を出したと思えば、佐兵衛の顔をじっと見つめてくる。その表情はやはり真剣で、あのへらへらとした笑みは何処かへ行ってしまったかのようだった。
 そして、聞いて頂けるか、と神妙な前置きをして。サクラは人心には在りうべからざる葛藤を語り始めた。

「草木とは、獣の如く狩りをせぬもの。禽鳥の如く魚(うお)を獲らぬもの。そして人の如くに互いで殺し合いをせぬもので御座います。ははっ、ただそれだけを聞かば、なんと清らかな生類か。人々が詩に草花の美しさを詠いしは、つまるところ、そのような聖者(しょうじゃ)の如き在り方に憧憬を覚えるからで御座いましょうぞ」

 サクラが息を継ぐ合間に、ぐっと日が傾いたような感覚。
 このまま夜になれば、きっと真の迎えが来るのだろうと佐兵衛は思った。

「だが、それは違う。間違っておる。そんなのは人が我らに抱きおった勝手な解釈で、我らの本質は鳥獣にも劣らぬ『貪欲』なので御座います。考えてもご覧なさい、草木の糧となるは大地の養分で、その養分とは紛う事なき『物の死』。生きとし生けるもの、自らの眷属すら『死』を以て糧とするので御座る。お分かりか、佐兵衛殿。僕は、お前様の死を喜んでおるのだ。魂まで貪ろうと、こうして黄泉路に逝かれる前に捕まえておる。そういう生き物故に仕方が無い。いくら僕が『人らしく』振舞った所で、渇きは癒せぬのです。さてもさても、もはやお前様が立って遁れることも、無論の事、僕が歩いて避けることも出来ぬ故……」

 その自嘲気味に笑う様は痛ましかった。
 サクラが地面に付きそうなほど頭を下げているのは、佐兵衛ひとりに対してというよりも、これまで糧としてきた生きとし生けるもの全てに対してなのだろうと思う。

「この通り、許して欲しい。僕は、お前様を離す訳にはいかぬ。浄土にも地獄にも行かせる訳にはいかぬ」

 そう言って佐兵衛に向けて謝したなり、サクラは微動だにせずに言葉を待っている。気持ちは、まぁ判らないでもない。仮に人間が牛馬や稲穂に向かって懺悔する事があるならば、きっとこうする他にあるまいと佐兵衛は思った。
 大きく息を吐き、視線を暗みはじめた空へと泳がせて。さて喚くべきか、嘆くべきか。得物は頼りないが物は試し、無礼討ちにでもしてみるか。
 そうして逡巡とも呼べぬ短い思考の末。桜の散り始めだろう一片が落ちるのを目で追う間に、佐兵衛は答えを出していた。

「ふむ、相判った」

 ――そのとき佐兵衛は確かに、勢い余って地面に頭を打ち付けるサクラを見た。

「は……!? な、今なんと?」
「だから、相判ったと。何を口開けておるか、見苦しいからやめよ」

「のう、サクラよ。ぬしゃぁ言ったな、人は互いに殺し合う生き物じゃと。確かにそうだ、しかも儂の如き武人ならば尚更じゃの。この戦に限っても、斬った人数は数え切れん。落ち延びる時などはもっと酷いぞ、もう己が助からぬと知っていながら、見るからに年若い追手どもを何人がとこ斬って捨てたか知れん。それでも彼奴らが儂を追うたのは、何故か分かるか。それはほれ、この首級が『誉れ』となるからじゃ。儂が此処まで遁れたのは、それがこの身の『誉れ』であるからじゃ」

 佐兵衛は一息つき、落陽の眩さに目を細めた。
 もう、しばらくも保たぬだろう。日に二度も死ぬなど、そう出来る経験ではないと思えば、不思議と顔は緩んだ。我ながら何故にここまで舌が回るか知れないが、どうも死に目に会えず仕舞いであった息子たちへ語っている気になっていたらしい。そう思えば恥ずかしくもあるが、今さら佐兵衛の口は止まらなかった。

「つまるところ、儂らは『それ』を競い合って戯れているようなものじゃ。この憂き世で確かなものはそれだけよ。儂らのたかが五十年など、父祖に子孫に誇れるような生き方たれば、それだけで良い。お主は武士ではないが、そう思わぬか、サクラ。お主は初陣に立つ若武者のようじゃ。儂の倅もそんな年での、命を奪う事が怖いと震えておったよ。だが怖れることはない。善悪はうっちゃっておいて、意味があるか否かだけを気にすれば良い。しからばどうじゃ、お主が糧とした命が無駄だなどと、少なくとも儂は思わん。ならば、さぁ……あっぱれ誉れ高く、儂の首級を以て花と咲け」

「佐兵衛殿……」

 俯いたまま聞いていたサクラの目に、落陽の赤が光る。
 武士の情けで見なかった事にしていると、やがて顔を上げた彼は、以前のようにへらへらとした笑みを浮かべて。

「……は、やはり大した御仁だ。死ぬのも奪うのも恐ろしゅうないなど、僕には真似が出来そうにない」
「まぁ、正直に言えばの、地獄行きだけは怖い。じゃによって、お主に食われて浮き世にとどまるのは望むところなのだが」
「はははっ! よしよし、ならば僕は張り切って千年は生きましょう。その頃には閻魔様の地獄帳も取っ替えられておって、お前様の事など分かるまい」

 違いない、と佐兵衛はサクラと共に笑った。
 悪くない死出だと思う。この一時、もしくは一生が夢だとしても、その最期は確かにこうして笑っていられたのだから。

「そうじゃ、ついでに聞いてくれるかの」
「なんだ、まだ未練があると。はは、さっきは格好良い事を言いおってからに、情けないのう」
「違うわい。武士たるもの、辞世の句の一つも残したい。が、生憎と紙とか手首とか、色々と持ち合わせがなくての。この際、残せなくても良い。せめてお主、聞いてくれるか」
「む……心得た、聞こう。いつか人にでも転生(てんしょう)したならば、お前様の事を句と共に誰かれかまわず語り聞かせましょう」
「はは、それはありがたい。では……」


我が霊(たま)の 標たれかし 桜花
千代の先まで 誉れ伝えよ


 笑声は高く、桜舞う空へ。
 佐兵衛はそこに、見果てぬ父祖らの面影が浮かぶのを見た気がした。いや、ここまできて気のせいでもあるまい。その中で父は満面に笑みを浮かべ、誉れ高く死にゆく佐兵衛を「良うやった」と懐かしい戦枯れした声で褒めてくれた。

(了)