エッセイを書かせていただく機会があったので。
一貫した話題について短くまとめるのは難しいですね。小説とは、また違った趣向の凝らし方があって面白いかと。
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今日もまた、近所の小さなドーナツ屋さんに並んでいる。
つい先日までは半袖シャツで過ごせていたのに、上着を引っ張り出してくる季節に変わってしまった。カイロを使うにはまだまだ早く、でも冷たい秋風には肌寒さを覚える。上着を着たいけれど日中持ち歩くのが面倒で、結局家の玄関に置いたまま。
そんな時、ついつい食べ歩きできるようなもの、たこ焼きとかおでんとかを買ってしまった経験はないだろうか。私はそれが、できたてのドーナツなのだ。肌寒いとき、無性に食べたくなってしまう。
ドーナツといえば、今年の1月にクリスピークリームドーナツの新宿サザンテラス店が閉店したのをご存知だろうか。
2006年の開店直後はメディアでも大きく扱われ、常に2時間待ちの行列が出来ていた人気店であったはず。待ち時間にできたてのドーナツを配っていたことを覚えている人は多いと思う。その中心となった一号店が閉店したのだ。
近年の日本は、色々な流行り廃りがある。その波に乗りきれないと、いくら魅力的な商品を取り揃えても、一過性のブームで終わってしまう。クリスピークリームドーナツ新宿サザンテラス店の閉店は、まさにそれを象徴する出来事だったと思うのだ。
同じドーナツ店のミスタードーナツは、8月末にタニタとコラボした『ベジポップ』を発売した。スイーツなのに、野菜を使いヘルシーかつ身体に良いという、近年の健康志向を逆手に取った商品になっている。ダイエットブームと言われる中で「甘いものは食べたいけれど、カロリーも気になる。どうせ同じカロリーを取るなら身体に良さそうなものを」という消費者の心理を捉えた商品戦略だ。それでも、ここ数年の売上と店舗数はかなりの減少傾向にあるという。
なにも店で買わなくても、ネットで調べればレシピが出てくる。クロワッサンドーナツ、半生ドーナツ、豆腐ドーナツとか、聞いたことのない種類だって、たくさんある。でも自分の中にもブームはあって、今はお菓子作りの順番ではない。時間も手間も惜しんでしまう。
だから、帰り道にドーナツを買っちゃうのも、コート無しで出歩ける期間だけのブームだったりして。なにせいつの間に寒いから、寄り道するのも嫌になってしまうのだ。
あるいは、ここの焼きドーナツにハマっただけかもしれない。こんがりとした焼き色と、サクサクふわふわな食感はたまらない。
どちらにせよ、冷めないうちにいただきます。ほら、店員のお姉さんがドーナツを差し出してる。
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特にドーナツが好きなわけじゃあ、ないんだけどね。