【ヘンタイ魔導師と不思議な魔法薬】(3)
「アルルッ!!」
「うわっ、シェゾ!?」
あの後俺は、ラフィーナとか言う巻き毛の少女の言うとおり、町でアルルを見つけた。今日こそコイツの魔力を奪ってやろう。
「お前のチカラ…今日こそ俺によこせッ!!」
「ちょっと待ったッ!!」
アルルの肩を掴んだ俺を止めたのは、銀色の長い髪にエメラルドグリーンの目をした少女、シエラが立っていた。シエラは俺を睨みつけている。
「シェゾ、君はアルルに近づいたらダメだ。私が渡した薬を飲んじゃったんだろう?今の君は、我を忘れて自分の欲望に支配されている。君がアルルに近づいたら、君は間違いなくチカラを奪う前に殺してしまうだろう」
「ふん、知ったことか。お前ごときの弱い魔導師が邪魔をするな」
俺が欲望に支配されている?コイツは何を言ってるんだ。
俺がチカラを奪う前に、殺すわけがないだろう。コイツのチカラを奪いさえすれば、俺はぷよ地獄の王に近づけるのだ。
「やれやれ、口で言っても聞かないか…。仕方ないなぁ…」
シエラは呆れた顔をして、体の前に手をかざした。すると一瞬まばゆい光が走ったかと思うと、手に杖を握っていた。
「お前、俺と闘(や)り合う気か?バカなことを」
「いつもは威力が強いから使いたくないんだよね…。ま、しょうがないか」
「いいぞ、無限の闇に葬ってくれる!」
「闇の王よ…、汝のチカラ…我が月光の杖へ与えたまえ…!!」
シエラは杖を掲げて、呪文を唱え始めた。すると、シエラの周りに黒い色をしているオーラが集まり、杖にチえにいれさえカラを与えている。俺にはそれが、サタンのオッサンの使う闇のチカラと同じものだと、すぐに分かった。
やはり、闇の王はあの迷惑なオッサンで、俺ではないのか…。だが、コイツのチカラも手に入れれば、アイツを倒すことも可能なのだ!
「ほう…、いいじゃないか。お前のチカラも貰うとするか…!」
「そうはいかないかも。だって私…」
そう言って杖を上へ投げると、やがて空が暗くなり、シエラは飛び上がった。
先程まで手にしていた杖は、大きな漆黒の鎌へと姿を変えていた。
「君とは違う、闇の貴公子の一族だもの」
シエラの瞳はエメラルドグリーンとは違う、鮮血の如き赤に変わっていた。
それは、サタンと同じ色だった。
俺は悟った。コイツには勝てない。コイツはサタンと同じぐらい強大な魔力を持っている。人から奪った闇のチカラは通用しない…!
「ブラックアーチッ!!」
やがて鎌は大きく弧を描き、俺は意識を失った。