*タイトルの意味。名月の夜には雲がかかってせっかくの月が見えず、満開の花には風が吹いて花を散らしたりする。
転じて、良いことにはとかく邪魔が入りやすく、思うようにはいかないということ。
「叢雲」は「群雲」とも書き、群がり集まった雲のことをいう。
ということで、今回は風というものについて少し語ってみたいと思います。
*まずは風とは何か
基本
現代では「気流」が類義語にあたる。「風」に対して、風が全くない無風状態のことを「凪」という。
また、古来、風という言葉は眼に見えないものを象徴するためにも使われる。日本語でも意味深い言葉であるが、日本語以外では例えばヘブライ語で風に相当し、龍の発音に似る「Ru(巻き舌)ah」という言葉は深い意味を持っている。(→聖霊、霊性の項に説明あり)
空気全体の動きということで、全体的な雰囲気の方向のような意味で「風」という言葉が使われる例が多い。選挙において「無党派の風が吹いた」とか、「逆風が強かった」等という。また、芸術やファッションなどにおいて○○風(ふう)というのもこれに近い。
*風の名前
風は人々に大きな影響を与える。人々は様々な風を区別し、様々な名前をつけてきた歴史がある。例えば以下のようなものがある。
風向によるもの
北風、南風、東風、西風。
風向別の呼称は、単に方角を付けただけではなく、その風のイメージが付加されることが多い。日本では、北風は冷たい冬の風、南風は暖かい夏の風として認識されている。
慣習によるもの
そよ風、春風(はるかぜ)、強風、突風地域性のもの(地方風)からっ風、春一番、木枯らし、六甲颪、やませ、ミストラル、エテジアン、シロッコ、ハブーブ地域性があるが学問的用語としても用いられるもの。
海風、陸風、潮風、谷風、出し風、颪(おろし)、滑降風(カタバ風)、ブリザード、フェーン、ボーラ学問的用語
ビル風、爆風現象名
竜巻、塵旋風(つむじ風・旋風)、ダウンバースト、乱気流、風塵、砂塵嵐(砂嵐)
*気象学的説明
*風杯型風速計
吹流し。風の吹いていく方向に流れている。
現代の気象学においては「風」とは、地球上の大気の流れを意味している。厳密には、地面に対して水平方向の流れ(水平風)のみを指し、垂直方向の流れ(鉛直風)は上昇気流または下降気流というが、一般的には分けないことが多い。ただ、日常において風は水平方向に吹くことが多いため、風といえば普通は水平方向の風を指す。
*風の要素
風は、風向と風速の2つの要素に分解してとらえることが可能である。
風向は、0度から360度までの方位で表されるが、通常は16方位で表す。風向に関してはしばしば勘違いが起こるが、「北東の風」は北東から吹いてくる風のことで、観測者を中心に見ると北東から南西に向かって吹く風を示す。
風速は、日本では秒速 (m/s) で表すのが普通であるが、国際的にはしばしばノット (kt) がよく用いられる。また、風速は0~12の13段階に分類された「風力」として表現されることがある。
気象学上風を物理量として扱わなければならない場合は、この2要素を用いる。ただ、これは風が水平方向にしか吹かないと仮定した場合の表現であり、垂直方向の風は表現できない。垂直方向の風を表現する際は、鉛直p速度というものを用いる。
*風が吹く原因
物理学的には、場所による気圧の不均一を解消しようとして発生するのが風だと解釈できる。気象学では、「風は気圧傾度力によって発生する」と表現する。
気圧の不均一や気圧傾度力が生まれる根本的な原因は、地球上において、場所によって太陽エネルギーの分布(≒温度)が異なるためである。日光の当たり具合や地表の温まりやすさの違いが、島や大陸といった巨大なスケールで存在すると、気圧が不均一になり、数千km規模の高気圧・低気圧が生まれる。高気圧から低気圧へと流れる空気が、「風」の主因となる。
気圧の不均一・気圧傾度力が大きいほど、風は強くなる。天気図で言うと、等圧線の間隔が狭いほど風は強い。ただ、高気圧・低気圧の風は長い距離を流れるため、コリオリの力や遠心力を受けて回転を伴う風となる。これを地衡風、傾度風という。風の回転を物理量として表現する際には、風向・風速では不十分なので渦度を用いる。
*風に作用する力
気圧傾度力以外で、風に作用する力には以下のようなものがある。その場所その時の風によって、働く力や大きさは異なる。
コリオリの力(転向力) - 水平方向の大きさが数百~数千kmと大きな風(低気圧や高気圧に伴う風)に働く。
地表との摩擦力 - 地表付近を流れる風に働く。上空に行くほど小さくなり、高度約1km以上ではほとんど無視して考えてよい(自由大気層)。鬱蒼とした森林の中や建物が密集したところでも強く働き、風の様子を大きく変える。
風自身の回転による遠心力 ――竜巻や台風の中心などの場合はこの力——が大きくなる。台風の目は風に働く遠心力が大き過ぎると気圧傾度力と釣り合ったところで、それ以上内側に風が入り込めなくなり、強い上昇気流となり境界をつくる現象である。
地球の引力(重力)——重力は、密度が高く温度が低い空気ほど大きく働く。上昇気流・下降気流に関しては大きな影響力がある。水平風でも、重力波の風などには大きな影響を及ぼす。重力は、裏を返せば密度の低い空気に働く浮力と考えることもできる。
*風の変化
*風の変化する周期をグラフ化したもの
風は常に変化しているが、変化の周期には傾向がある。地域差も大きいが、一般的には低気圧・高気圧の通過といった総観スケール気象による変化(約4日周期)が最も大きく、次に季節変化によるもの(1年周期)が大きい。またこれと並んで、『風の息』と呼ばれる小刻みな風向風速の変化によるもの(約1秒周期)も卓越する。海陸風の影響を受ける地域では、約12時間周期の変化も卓越する。
一般的に、『強風』と呼ばれる風は、数十分~数日間程度連続する風速の大きい風を指す。強風の大きさを表す数値としては最大風速が適している。
一方、『突風』と呼ばれる風は、数秒~数分程度の短時間吹く風速の大きい風を指す。このような風は、強風の期間中において、気流の乱れつまり風の息によって突発的に生じるものがほとんどである。例外的に、単発的なものとして竜巻やダウンバースト、積乱雲などのメソスケール気象(いわゆる局地現象)が主因となって起こる突風もある。突風の大きさを表す数値としては最大瞬間風速が適している。
最大風速に対する最大瞬間風速の比を突風率といい、場所ごとに固有の値をとる。普通は1.5~2.0前後となる。天気予報では、強風被害が考えられる場合でも主に最大風速が予想されるので、これに突風率をかけた値の最大瞬間風速が吹きうると考えて、強風対策に役立てる。突風率が場所ごとに固有の値をとるのは、建物や樹木、地形の影響により風の息が異なるためである。
以上、風について(part1)でした!