ランチェスターのイミテーション ( No.59 )
日時: 2017/08/26 14:18
名前: ダモクレイトス ◆MGHRd/ALSk (ID: DBVr6NG.)

*ランチェスターとは、ランチェスターの法則。それをイミテーション、そのまま模倣する……海戦とはそうである、ということ。
 まぁ、ランチェスターの法則って元々戦術研究の産物だし、イミテーションするものでもないんですがね。要は陸戦より海戦は、それがそのまま当てはまるってことですね……
 なんで突然こんなことを書き始めたかって? あぁ、そんなこと気にしませんよね皆さん? このスレのカオスっぷりは今に始まったことじゃないです。
*ただまぁ、これには私としては少しちゃんとした意図がありまして。私、一応二次(映像)の方で、艦これの小説執筆しているのですよ。
 それで海戦に対する知識とか歴史とか、兵器や船についてなど、やっぱ手近なところに資料として置きたいな、と。


*海戦術とは

 海戦において艦隊を効果的に運用する戦術である。海軍戦術とも言う。陸戦や航空戦で用いられる戦術とはその内容が大きく異なるために区別して理解されている。

*概説

 海戦術とは海戦における戦術であり、任務を達成するために戦場および戦場付近の地域における艦隊の陣形・運動・射撃などを指導する科学・技術であると定義される。
 また海軍部隊は気象・海象の影響や補給の問題から陸軍部隊のように一定の地域において長期間対峙することが出来ず、短期決戦となる。そのために戦果は圧倒的な勝利と、壊滅的な敗北に二極化する特徴が見られる。さらに陸軍部隊のように地形的な優位を持つことが難しく、その上兵器の物量や質の優劣が明確に勝敗に表れる。
 従って彼我の戦闘での優劣はランチェスターの法則がそのまま適用されることになる。したがって戦闘の大勢は戦略配備によっていかに優れた戦力を集結させるかによって決まる。しかし実際に敵を発見して艦隊が戦術運動を行い、敵を撃滅する戦闘においては海戦術の有用性が発揮される。
 海戦では戦場が海洋・河川・湖などの水域であり、そこで活動する戦闘単位は艦船となり、その集合体として戦闘を行う場合には艦隊として運用される。艦船は通常それ自体が複合的な兵器システムを装備しており、また陸上戦力のように戦力を細分化するなどの多様な運用を行うことはできない。
 ここでは主に対水上戦闘について述べるが、海上作戦においては対空戦闘・対潜戦闘・航空戦・航空打撃戦・電子戦・情報戦なども同時に遂行される。定量的な戦闘力の優劣だけでなくその連絡と連携の運用的な優劣によって劣勢な戦力が優勢な戦力を破ることも可能であると考えられ、また歴史もこれを実証している。敵部隊の大部分の撃沈、捕獲、戦闘不能によって戦闘の勝敗は決まる。

 
*基礎概念

 海戦術の基礎概念を中心に取り上げる。戦術#基礎概念も参照のこと。
 戦則 - 海上作戦における任務達成のための各種行動の基本要領。戦闘教義。
 戦勢 - 戦闘における戦力や行動における優勢であり、攻勢と守勢がある。
 戦機 - 戦勢の攻守が転換する機。
 戦策 - 戦術を実施するための画策。陣形・使用速力・基本方針・敵味方識別 方法・各部隊の任務・戦闘開始時の運動などを定める。
 艦隊 - 2隻以上の軍艦から編成される海軍部隊。狭義には海軍部隊の編制上の単位であり、艦隊の下位には戦隊や群が置かれる場合がある。
 戦略 - 海軍における狭義の意味では、敵と離隔した状況において部隊を効果的に運用する術策。
 戦術 - 海軍における狭義の意味では、敵と接触した状況において部隊を効果的に運用する術策。
 戦務 - 海軍部隊における戦闘を遂行するための航海・機関・砲術・機雷・飛行などの諸業務。
 海象・気象 - 海象とは海洋の状況であり、気象とは大気の状況である。艦隊の運動に大きく影響する。
 制海権 - その海域の支配権であり、海軍力によって支配は実行される。
 制空権 - その空域における優勢であり、空軍力によって実行される。
 主隊・直衛 - 主隊とは重装備の艦艇から成る部隊。直衛とは主隊の周縁部を占位して警戒などを行う部隊。
 航行序列 - 航行するための艦隊の隊形である。
 警戒航行序列 - 要警戒地域において航行するための艦隊の隊形である。
 戦闘序列 - 戦闘するための艦隊の隊形である。
 攻撃 - 火砲・ミサイルなどの火力を敵に対して使用すること。
 機動 - 部隊の位置を変更すること。敵を発見してから行う接敵機動と敵と交戦を始めてから行う戦場機動がある。
 展開 - 艦隊の序列を状況に応じて変更するための運動。
 追撃・退却 - 追撃とは退却する敵に対するさらなる攻撃、退却とは戦闘で劣勢に置かれて行う後退。
 小破・中破・大破 - 小破とは相当な時間を要せず整備部隊が修理出来る程度の損傷。中破とは相当な時間を要する程度の損傷。大破は整備部隊では修理不可能な程度の損傷。
 基地 - 部隊を支援するための根拠地。戦時において外国に設置する前進基地などがある。

*原則

 海戦術の原則論には陸軍の戦術と共通しているという立場と共通していないという立場がある。現在までに以下のような原則が論じられている。
 18世紀のロシア海軍黒海艦隊司令官フョードル・ウシャコフは海戦術の原則を論じている。
 敵兵力の一部に自己の全戦力を集中すること。予期していない行動は敵の撃破にとって大きな価値があること。損傷した艦船には積極的な支援が必要であること。
 19世紀のアメリカ海軍のアルフレッド・セイヤー・マハンは『海上権力史論』において海軍戦略などを包括した理論体系を構築しただけでなく、海戦術の原則についても考察した。これには陸軍戦術について考察したジョミニの理論と類似している。

*目標の原則、集中の原則

 日本海軍の戦術学者秋山真之は戦史研究等から日本海軍の教義を研究開発した。
 攻勢 - 戦勢は攻勢を維持して積極的に攻撃すること。
 先制 - 敵よりも先んじて機動・攻撃すること。
 集中 - 敵の一部を全戦力で攻撃すること。
 決戦 - 決定的な戦果を求めて敵を撃滅すること。
 天候・地形の利用 - 部隊の特性や戦い方に応じて天候・地形を十分に利用すること。
 奇襲 - 敵の不意を突いて攻撃すること。
 独断専行 - 部隊指揮官は状況に応じ、自己の任務と権限を考慮して適切な独断を行うこと。
 勇断決行

*戦闘力

 戦闘力とは戦力が持つ戦闘を遂行する能力であり、海戦術においては攻撃力、防御力、運動力、通信力の4要素からなり、それぞれ機力と術力の2つの側面を持つものとして考えることができる。機力とは物的な戦闘力の要素であり、術力とは人的な戦闘力の要素である。
 攻撃力 - 艦艇または艦隊が攻撃を行う能力。火砲や水雷等の機力とそれらを操作する砲術や水雷術の術力から成る。
 防御力 - 防御を行う能力。装甲や防水区画等の機力とダメージコントロールや戦闘準備等の術力から成る。
 運動力 - 運動を行う能力。推進機関や航舵機関等の機力と運用術や機関術等の術力から成る。
 通信力 - 情報伝達を行う能力。信号機や通信機等の機力と術力から成る。

 軍艦では一般的に、攻撃・防御・運動・通信の基本的な比率が5:2:2:1であると秋山真之は論じている。戦闘力は概ね攻撃力に代表され、機力と術力の積で表す。例えば12門の砲と100発中20発の命中率(命中率20%)の攻撃力は240として考える。

*艦種

 艦艇は海戦において戦闘単位であるが、その設計や装備から航空母艦、巡洋艦、駆逐艦、フリゲート、潜水艦等の艦種に分類され、さらに排水量によってその規模が区分される。以下にいくつか艦種をあげる。
航空母艦 - 航空機の離着陸が可能な滑走路を甲板上に備えて航空作戦の支援が可能な艦艇を指す。
 潜水艦 - 潜行することが可能な艦艇を指す。
 戦艦 - 基準排水量が一般的な巡洋艦よりも大きい艦艇を指す。歴史的には19世紀以降に強力な火砲を装備した大規模な艦艇であったが、航空母艦の出現に伴う海戦術の変化によって現代では建艦されていない。
 巡洋艦 - 基準排水量が概ね20,000トン以下の艦艇を指す。歴史的にはフリゲートに装甲を備えた装甲フリゲートであったが、19世紀には遠洋航海に適した艦艇として発展した。
 駆逐艦 - 基準排水量が概ね8,000トン以下の艦艇を指す。歴史的には水雷艇を駆逐する艦艇であったが、現代では対空・対潜戦闘の装備を持つ汎用的な艦艇となっている。
 フリゲート - 基準排水量が概ね5,000トン以下の艦艇を指す。歴史的には軽量で快速な艦艇をフリゲートとしていた。
 コルベット - 基準排水量が概ね1,000トン以下の艦艇を指す。歴史的には沿岸警備等の目的で用いられる小型の艦艇を指し、第二次世界大戦後でもミサイル、魚雷、爆雷等を装備したコルベットが建造されている。

 戦艦、巡洋艦、駆逐艦、フリゲート、コルベットの区別は明瞭な定義に基づいたものではなく、時代によってもその内容や名称は大きく異なる。

 作戦部隊は以上の中でも航空母艦あるいは巡航ミサイルを装備した大型の巡洋艦(時代によっては戦艦)を中心として巡洋艦、駆逐艦、フリゲート、潜水艦、掃海艇、航空機などで編成される。また基地から遠く離れて活動する外洋艦隊は洋上補給兵力である給油艦、給兵艦、工作艦などを艦隊に加え、これらを通じて基地からの後方支援を受けて作戦行動を行うことが出来るようになっている。これらは対空・対艦・対潜能力を有機的に結合させうる航行序列で航行するように努め、また艦艇によって最高速力は異なるので陣形に乱れが生じないように使用速力を最も遅い艦艇の速力で統一する。

 今回はここまでとします。