そんな狭間の中に居る曖昧な存在を題材にした物語を書きたいと私は思って、「アーマーズ」の執筆を開始した気がする……
付喪神という種族の妖怪が居る日本において、悪くない題材だと思うのである。あらゆる物質には精神が宿るという考え、嫌いじゃないです。
とか言いながら、今回のはそういうのとは全く違うのですが。
今回の取材は「物質」、その解釈。
*物質
いわゆる「もの」のことで、生命や精神(心)と対比される概念。「生命の世界、物質の世界」などと使う。
(哲学)感覚によってその存在が認められるもの[1]。人間の意識に映じはするが、意識からは独立して存在すると考えられるもの。
(物理学)物体をかたちづくり、任意に変化させることのできない性質をもつ存在。空間の一部を占め、有限の質量をもつもの。
*概説
まず述べておかなければならないが、「matter(物質)」という概念は西洋での概念史を辿ってみると実は、あきれるほどの混乱を呈しており、学者ごとに主張はバラバラで、互いに矛盾するような説明に溢れており、それらのバラバラの見解がある一方向に向かってすっきり変化してきたわけでもない。
ハロルド・ジョンソンによると、古代ギリシャでは物質は「本質的に不活性なもの」と見なす人がいたが、ビュヒナーやマルクス主義では「運動や活動と一体で切り離せないもの(つまり活性のあるもの)」と見なした、 デカルトが「本質的に空間に延長する(空間を占める)もの」と見なしたのに対しライプニッツやボスコヴィチは物質を「延長の無い(空間を占めない)、エネルギーの中心」と見なしたし、バークリーやカントが物質を「本質的に理解不能のもの(あるいは不可知のもの)」と見なしたが、ホッブズは「哲学にとっての唯一な明瞭な根拠」と見なしたし、 デモクリトスが「その本質として永遠に現実的」と見なしたが、プラトンやヘーゲルは「可能態以上のものではありえないある種の存在」と見なした、といった具合である。
その混乱ぶりがあまりにひどいので、それらの概念の共通点を見つけて表現しようなどと考えてしまうと、反対の概念が山ほどあることを見落としてしまう危険があるし、また、ある概念を他の概念に比べて不当に扱ってしまうことになりかねないと、ハロルド・ジョンソンは指摘した。
現代でも物質というのは何か?というと、各専門ごとに次のように、著しく異なった説明(解釈)がなされている。(化学的に言うと)元素(原子)から構成される固体、液体あるいは気体の状態をとる存在を指す、ということになる。(「物質の元素は、さらに素粒子によって構成されている」などという解釈になる。)素粒子論では「素粒子の集まり」という解釈になる。相対性理論では「エネルギーの一形態」という解釈になり、量子論では「場」と説明される。
なお、物質はあくまで宇宙を構成する諸存在のうちの1つである。物質と対置される存在は「非物質」と呼ばれ、空間、時間、情報を始めとして、多数存在する。(それらについては本項ではこれ以上の説明は行わない。詳細は「存在」の項を参照のこと。)
*自然科学
ドルトンは原子説を提唱し、アボガドロは分子説を提唱した。
ラボアジェによる質量保存則の確立以来、質量が物質を特徴づける本質的な量と考えられるようになった。素粒子も質量をもつゆえに物質と考えられることになる。光や熱などのエネルギーは質量を持たず、物質とは別のものと考えられていたが、アインシュタインは相対性理論で、質量とエネルギーに等価性があるとして扱うことを提唱した。
物質は置かれた条件により種々の相転移を起こす。特に分子や原子が集まって構成された通常の物質は「物質の三態」(固体・液体・気体)と呼ばれる3つの状態をとる。次にこれらの状態変化を挙げる。
固体から液体への変化 融解 - 物性値:融点、凝固点
固体から気体への変化 昇華・気化
液体から固体への変化 凝固・固化
液体から気体への変化 蒸発・気化 - 物性値:沸点
気体から固体への変化 凝固・昇華
気体から液体への変化 凝縮・液化・凝結・結露
*物理学と化学
物理学(Physics)と化学(Chemistry)の境界は明確ではない。現代的自然科学の観点では、化学変化とは原子間の結合組み替えが起きる変化である。それに対して原子間の結合組み替えは起きない分子同士の位置変化のみによる変化が物理変化である。典型的な物理変化には、物体の変形、融解や蒸発などの状態変化がある。物理変化を引き起こす要因には力と熱があり、それぞれ力学と熱力学の対象である。多くの場合、化学変化は物理変化よりも大きなエネルギーを必要とする。化学変化は化学反応とも呼ばれる。
19世紀末に発見された放射能のような原子核反応、さらにその後発見された多数の素粒子相互の変換は化学変化よりも大きなエネルギーを必要とし、古典的な物理変化とは別の現象だが、これらの現象の研究は物理学として分類されている。
個別の物質の状態変化や熱力学の研究のような、物理学と化学との境界領域の学問分野を物理化学(Physical chemistry /Chemical physics)と呼ぶ。
*物理変化と化学変化の例
次に化学変化の例を挙げる。
化合 - 化学変化により複数の物質から、別の単純な物質が生成する過程。
分解 - 化学変化によりある物質から、複数の物質が生成する過程。
酸化
還元
単に複数の物質を混合した場合は物理変化と見なされる。特に粒子同士の混合や懸濁液の調製、またはその逆の分離、は明確に物理変化と見なされる。だが分子レベルの混合の場合には化学変化を伴う場合もあり、化学変化とも物理変化とも断定しにくい場合もある。
次の例は典型的な物理変化である。古代以前から、これらの変化では材質が変化しないと認識されていたと考えられる。
*物体の変形、破壊、切断、接合、組み立て
目に見える混合 固体粒子と液体、固体粒子同士
次の例は、物の性質の一部が変化するが現在では物理変化と認識されているものである。
三態変化、水と氷
液体の混合、溶解
*物質の種類
物質を化学的概念で分類する場合、化学物質と言い表される。
化学物質
単体 - 単一の元素から構成される化学物質
化合物 - 複数の元素から構成される化学物質
物質が単一の主たる成分(化学物質)で構成される場合は「純物質」、複数の主成分から構成される場合は 「混合物」と呼ばれる。なお、純物質の微量副成分は不純物と呼ばれ、不純物と混合物とは存在比の程度の差であり、その境界は曖昧である。
物質の成分が同一であっても化学構造の違いにより異なる化学物質となる。
同素体 - 同一元素の単体で化学構造が異なり物理的性質(物性)が異なる物質。
異性体 - 分子の内部構造が異なる化学物質。
相変態 - 金属など圧力や温度により結晶構造が変化した化学物質。
構成する原子の核種が異なるものを「同位体」と呼ぶ。同位体は化学的性質は同一で物性もほとんど同一である為、同位体は化学物質の違いとしては通常は区別しない。放射線に関する物性など特定の用途に用いる場合はどの同位体であるかを区別する。
物質は通常、巨視的には電荷を帯びていない。化学変化により永続的な電荷をもつ原子・分子を「イオン」と呼ぶ。イオンは正と負とでイオン対を形成し、見かけ上は電荷を帯びていない状態で安定化している(高温化において原子核と分子との結合が乖離した状態が「プラズマ」)
*物質の基本法則
質量保存の法則
定比例の法則
倍数比例の法則
気体反応の法則
E=mc2(特殊相対性理論)
*物質の誕生
物質は、ビッグバンにより始まったエネルギーの形態分化の枝の1つを成している。
ビッグバン仮説によれば、ビッグバンにより始まったエネルギーは、やがて素粒子を生み出し、素粒子が結合して原子となる。宇宙初期には水素やヘリウムといった最も軽い元素が作られたと考えられている。これらの軽元素からなる雲は重力の影響により原始星を通じて恒星となる。より重い鉄や珪素、我々の体を構成する炭素や窒素などの元素は恒星内部での核融合反応で生成し、超新星爆発により恒星間空間にばらまかれた。また、鉄より重い元素は超新星爆発時に生成したと考えられている。
*物質の消滅
物理学では、現存する物質とある種対称的な性質を持つ物質を反物質と呼ぶ。物質は反物質と衝突すると対消滅を起こし、通念の "物質" としては消滅し、質量がエネルギーとなって何らかの形で放出される。
今回はこの辺で