Re: [雑談でも」自称ゲーマーさんの創作部屋 ( No.62 )
日時: 2017/10/24 16:51
名前: 雪姫 ◆dh1wcSF7ak (ID: /2mHKPC2)

シークレットガーデン「箱庭」


[力の試練]


仲間達と相談しルシアが選んだのは力の試練。謎の声は五つある祠堂の中で一番右にある祠堂へ行くように勧めた。赤く燃え盛る炎が描かれた扉は誰も手をかけていないのに自動的に開きルシア達をその中へと招き入れる。祠堂の中には壁一面に無数の位牌が祀ってあり、床には無数の石で出来た棺が置かれている不気味で不思議な空間。
「ここでどんな試練が行われるっていうんだよ」
リアが不満げに呟いた。確かにそうだ。謎の声に従い祠堂に入ってみたのはいいが次の指示が何もないのだ。唯一の出入り口である大きな扉の前に立ち往生するルシア達御一行。
何も起こらない。何も起きない。――なら一度、外へ出てみるかと大きな扉を開こうと押してみるが……「開かない!?」先ほどは誰も手にかけていないのに開いたにも拘わらず、今度は押しても引いてもびくともしないしないのだ。
冗談まじりにリアが「まさかこの扉を開くことが力の試練だったりしないよな?」と言ってみたが、あながち冗談でもなさそうだ。頑丈な扉は相変わらずびくともしない。
どうしたものかとみんなで頭を悩ませていたところだった、

"祠堂の上座にある棺を開けよ”

――低い不快な気持ちにさせる声が頭の中に直接聞こえて来たのは。
その薄気味悪い声はどうやらルシアにしか聞こえていないようだ。仲間達は無反応。
声が言う棺とは祠堂の一番奥に置かれている、ひときわ大きな棺のことらしい。この棺の蓋を開ける王に何度もルシアの頭の中に直接語りかけてくるのだ。

さて どうしたものだろうか。




[棺を開ける]

このまま悠長に仲間達と開かない扉と押し合いっこしている場合ではないのだ。今、この瞬間にもバーナードに捕まったヨナがどんな目に合わされているか、分からないのだ。いつまで生かせてもらえているか、分からないのだ。
――だからこそ。
ルシアは謎の声に従う事を決意した。
石で出来た棺はまるで何かを封印しているかのように重く硬く閉じられていて、ふぬぬっと渾身の力を振り絞って開けてみると、中から黒い靄のようなものが勢いよく飛び出しルシアの体を包み始めた。
「なにっこれっみんな、たすけ――」
助けを求めようとしたルシアの声は虚しくも、口から体の中へ侵入してくる黒い靄によってかき消されてしまった。
―そして黒い靄が晴れた
「遂に手に入れた 肉体を




 女神に封じられて 数億年 





 遂に現世に蘇った」


晴れた黒い靄の中に立っていたのはルシア、ではなく黒いローブをまとい大きな鎌を持つ


「我は―

      ”ディオス・デ・ラ・ムエルテ”なり」




髑髏の顔をした者だったという―。






                                       [死神end]






[棺を開けない]

゛棺を開けるのだ ルシア”

゛棺を開けるのだ ルシア”

何度も何度も壊れたからくり人形のように何度も同じ言葉を繰り返し頭の中に聞こえてくる謎の声。
まるでルシアを洗脳しようとでもしているかのように何度も、同じ言葉が繰り返される。
頭が痛い。頭痛が治まらない。
いくら頭痛が酷く意識が朦朧としてきたとしても、ルシアが信じるものはいつだって、どんな状況にに陥ろうとも変わらない、仲間達の声ただ一つだ。

「貴方のいう事は聞けません」


"なんと……なんと……愚かなァァァァァァ!!”

低い声。地鳴りと共に響いたその声は必要に開けるように迫っていた棺の蓋を吹っ飛させた。封じる蓋をなくした棺からは黒い靄のようなものが勢いよく噴き出す、その光景はまるで火山の大噴火のようだった。
ルシアは棺から離れ仲間達の元へ駆け走る。此処は危険だ。独りでいるのはもっと危険だ。出入り口の扉の前に団子のように集まり様子を伺う。

"ウウウゥゥアァァァアアガガガガガアアァァ!!!”

この世の者とも思えない雄叫びをあげるナニカ。
少しずつ晴れてゆく黒い靄の中に薄っすらと見える人影――それは黒いローブをまとい片手に巨大な鎌を持った

「我は―

      ”ディオス・デ・ラ・ムエルテ”なり」

髑髏の顔をしたものだった。
かつての英雄達すらも封じ込めることで精いっぱいだったと言われる、死神”ディオス・デ・ラ・ムエルテ”との戦闘が始まった。
作戦はこうだ。
ルシアとリアが真っ直ぐ、一直線に死神に向かって特攻する。
真正面から敵に突っ込むなど無謀の策だと言いたいところだが、これも考え合っての事、真っ直ぐ特攻するルシアとリアの後方からリティは銃を撃ち死神の気を散らす。死神は真正面から向かって来る敵と不規則に飛んで来る弾に踊らされ気が散るに違いない。
そして隙だらけの横から、シルとランファが巨大な鎌を奪う。死神がどんな攻撃をしてくるか分からないこの状況。そしてあの鎌の切れ味は厄介だ。早めに奪っておくに限る。
最後に残ったシレーナはリティの後ろに隠れ、みんなをサポートする役目に徹する。回復魔法を使えるのは彼女だけだから。

「行くよ、みんな!」
「おう」「ええ」

仲間達が答える。ルシアを真っ直ぐ見つめる信頼の眼差しで。





死神との戦闘は、ルシア達の勝利で終わった。
思えば、生まれ育った村を旅立ってからの初勝利だ。仲間達と分かち合う初めての勝利に、最初はなにがどうなったのか分からず皆呆けていた。
最初に口を開いたのは誰だったか? 誰かの「やった…の?」という一言でやっと理解した、自分達が勝利したことに。仲間達は喜び、抱き合い勝利の嬉しさを分かち合った。

"よくぞ倒されました"

ルシア達の勝利を祝福する謎の声。これは祠堂に入る前に聞いたあの声だ。
声は見事試練を乗り越えたルシア達を温かく向か入れる。此処へ入って来た扉がゆっくりと大きな音をたてながら開かれた――眩い光が視界を奪い瞼を閉じた。

"目を開けてみなさい_ルシア"

その声に従い、薄っすらと瞼を開け、まだ眩い光にを疎ましく感じつつも慣れた数秒後「――っ」ルシアが見た光景は。