Re: 氷菓子を添へて、【小説練習】注意追記 ( No.20 )
日時: 2017/09/08 23:12
名前: 史楼糸◆qsEeUJCPAI (ID: lt1F/mE6)

 
 
 
 今日、全てのテレビ番組がある話題について報道していた。

 「現代の最先端技術を施したAIをも遥かに凌ぐ超常的知能をもって、地球外生命体が地球に来訪」

 表示されたテロップを読み上げるも、だれも聞いてはいなかっただろう。自分のまわりではそう多くない数の人々がじっとテレビ画面上に浮かび上がるその字面を追っていたのだ。

 「先日、政府は初の地球外生命体の捕獲を迎え、今日未明、新たに一体の生命体の捕獲に成功したとの報告が入りました。先日同様、専門の研究施設へ護送されたとのことです。研究施設では解剖による検証を進行中です。また、その生命体は同種のものが複数地球に潜伏している可能性が高く、捜索は続けられていく模様です」

 液晶の向こう側で、噛みもせず淡々と事実が告げられていくのを追った。
 画面の右上に張りつけられた時刻に視線を奪われる。あと数時間もすれば、白衣を纏っているであろう身体を傾けた。磔にされていた四肢が動きだす。


          *


 「みんなご苦労だった。あとは検証チームに受け渡すだけだ。おもしろい結果が待っているだろうな」
 「一体目の検証結果では、どうやら宇宙人どもはタイムスリップを実践していると判明したそうです」
 「擬態もできるだろう。二体目の形状はすこし人間に似ていた。これからが楽しみだな!」
 「そうだな。二体目の受け渡しは明朝になるから、扉の鍵は厳重に閉めておけよ」
 「もちろんです。しっかり、閉めておきます」
 「頼んだぞ」

 ずれる足並みは遠のいていった。重たい扉を押し開けると、ブルーを帯びた暗光に室内へ誘われる。
 機材や用具やチューブに囲まれて、それは頭部と腹の中身をぱっくりと開示していた。
 たしかに、人間とよく似た形状をしている。

 ――あはれと想いながら、きれいなままの、皺のない手をとった。


 「この星に残る同胞たちよ。必ず我々の星に帰るのだ。必ず。か」


 読み取れた最後のデータを口にする。目前で息絶える、同胞の手を握り返した。





 ***

 ここでは初めまして。史楼糸と申します。
 皆様の作品を読ませて頂きました……! とても個性が豊かで、どの作品も読んでいてとても楽しかったです!
 感想、というほどのものでもないですが、また後日コメントをするかと思われます。
 勝手に参加させて頂きましたが、とても楽しかったです。また足を運びたいと思います。
 素敵な企画を提示してくださり、ありがとうございます*