Re: 氷菓子を添へて、【小説練習】 ( No.34 )
日時: 2017/10/02 22:42
名前: ねりねりねりね (ID: vVWBVHAo)

今日、全てのテレビ番組がある話題について報道していた。朝のニュースを見た全ての人が知っているそれを、君はあたかも大発見のように告げる。

「ねぇ、最近新種の鳥らしき群れが観測されたらしいよ」

画面の字幕を、そのままコピペしたみたいな文章。僕は応えない。忙しいんだから、くだらない話は止めてもらいたい。

「流れる雲みたいだから雲鳥とか、神話の龍みたいだから龍鳥とか、一部の人の間では都市伝説として語り継がれてたみたい」

サ行で舌を少し噛む話し方や、途中で交じる興奮気味の吐息が煩い。僕は返事をせずに、黙って作業を続ける。

「ねぇ、雲鳥と龍鳥ならどっちがいい? 僕は雲だなぁ。だって、ふわふわして美味しそうでしょ?」

痛い。親指の腹に、鮮やかな赤の亀裂が入る。包み込むように舐めると、鉄の匂いと甘い味が鼻の中で混じった。

「ねぇ、外を見てみなよ」
「え? どうして?」
「いいから、早く」

高く積み上げられた煉瓦の間を、鋭い風が突き抜ける。僕まで飛ばされそうになって、慌てて踵を地面につけた。

「うわぁ!」

反響する叫びと、機械越しの半音上がった叫びが、ちょっとだけズレて重なった。

「いまの、雲鳥かなぁ?! すごいや、大発見だ!」
「なんだよ、勘違いだろう。白いってだけで決めつけるなよ」
「そうだね、もしかしたら紙飛行機かもね?」

眠りから覚めたようにハッキリした声に、少し怯んだ。ううん、違う。違うよ。これは、君のための雲鳥。