・・・どうして。どうしてどうしてどうしてどうして。
あの時、勇気をださなかったのか。小さな彼には、そんな
経験がいくつもあった。小さな彼・・・いや、彼女が、
初めて勇気をだしたお話。
「もう終わった!無理だ無理!こっから取り戻せる訳ない!」
それが彼が心の中でいつも言う口癖であり、逃げる為の言い訳だった。
学校に完全に遅刻すると、心の中でいつもそう唱え、行きたくもない
所へゆっくりと行った。一緒に遊ぶ約束をしている人の前で、「いれて」
なんて言えない時、自分の中で葛藤した。それでも言えなくて、後で
自分を責めて、責めて、責めた。”どうして”そんな言葉が、何度も
頭の中を過る。そのたびに自分がいやになった。言い訳を言う自分が。
逃れようとする自分が。楽しようと怠ける自分が。自己嫌悪で、押しつぶ
されそうになる。それでも、なにもできない。目の前で起こっている
出来事を止めるなんて、できない。・・・ある日。クラスメイトが虐め
られていた。行こう行こうと思っても、一向に足が動かない。”助けなきゃ”
その考えだけで、彼は殴りかかった。虐めっ子に。
「虐めなんて馬鹿みたいな事するな!!日本には虐めで死んでった子が
いっぱいいるんだぞ!!命を粗末にするな!!」
・・・なんて。なんて話があったら、少年・・・いや、少女は勇気を
出せたのだろうか。ただ。少し位は・・・進歩したのではあるまいか。
いつか。いつか、勇気を出してなんとかする。という事ができるのか、
こんな自分でも人の役にたてるのか、少年は・・・考えた。でも、答え
なんてわからなくて、まだ彷徨ったままだ。そうして、少年はどこか
クソ真面目な自由人へと変わり果てた。