名前も知らないのに、顔すらも知らないのに画面上でのやり取りだけで私は君に惹かれていた。
「ちょっと話したい」
学校での出来事、ちょっとした1日の中で起こった面白い出来事や先生の深そうで実はそこまで深くない話、同級生の愚痴なんかを私はいつも君に話していた。
大抵は私がほとんどを話していて、君はそれに対しての相槌や返事なんかをくれるだけ。
でもそれがすごく心地いいんだ。
口下手な自分がこんなにもスラスラと相手に思ったことを伝えられたのは、きっと画面に文字を並べて繋げて書いて……という形をとっていたからというのももちろんあるだろう。
──「今日もなにかいいことあったの?」
メッセージの横にちょこんと表示された時間は私がメッセージを送った時間から1分後だった。
たった1分しか経っていないというのに、私にとってはすごく長いものに感じられた。
「いいことってわけじゃないけど、今日ついに唯一クラス内で私に話しかけてくれてた湊さんも、私のことを無視するようになったんだ」
送ってから少し後悔する。 でも反面どこかで、どんな返事が来るのかということを期待している自分もいる。
──「今日で湊さんのことは嫌いになった?」
ふいをつかれたような感覚。
少し迷ってから私はすぐに文字を打って送る。
「いや、湊さんを責める気にはなれない。 私もなんだかんだ言って今まで心の支えになってくれていたし、むしろ昨日までのことを感謝したいくらい」
このことは紛れもない事実だ。
私が湊さんに対して抱いている気持ち。 けれど、それでも心の片隅では……
──「でもやっぱり昨日まで関わっててくれていた人から無視されるって、辛い」
──「よね」
辛い、で切られた文章が送られてきた時は思わず君の素直な言葉、気持ちが聞けたのかと思い嬉しくなった。
けれどあとから間を開けずに「よね」も送られてきた。
「ちょっと自分が思っていた以上に湊さんとの別れが切なかった」
クラスメイトのほとんどから煙たがれていた私にも、他の人とそう大差なく接してくれていた湊さん。
正直……最初はそうやって私のことを新たな方法でからかっているのかと疑い、自分から壁を作ったこともある。
──「きっとこれから先、君にはたくさんの出会いがあるはずだよ」
そうメッセージを送ってくれた君。
今の君は私へそうメッセージを送る時、どんな気持ちで表情でしたか?
色々と想像をしてみるけれど、全然ピンと来ません。
多分あなたとなら、画面越しじゃなくても色々と話せると思う。
次は何を話そうか。
私と湊さんの話じゃなくて、君と私の今の関係は果たして1つの単語で言い表すとすればどうなるのか、について話してみようか……。
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はじめまして。 初投稿、しゃぼんだまと申します。
普段は別名義で活動しています。
不慣れなのでたどたどしい文章ではありますが、前々からちょくちょくとこのスレッドを見させて頂いてました。
今後ともお世話になる機会があるかと思いますので、よろしくお願いします。