Re: 第6回 せせらぎに添へて、【小説練習】 ( No.202 )
日時: 2018/06/10 03:20
名前: 液晶の奥のどなたさま (ID: jsGJCRkw)

 名前も知らないのに、ぼくはあなたが大好きだって確信持って言えるんだと、そう言ったらあなたは嗤うのでしょうか。そのぽってりとしたまぶたを長いまつげと一緒に伏せて、きゅっとばら色の口の端を引き結んで、何かこらえるように笑うんでしょうか。
 不甲斐ない従僕でごめんなさい。何とかこのぽんこつな頭に詰め込もうとするのですが、大事なことを一つ覚えるはしから、大事だと思っていたことが一つ抜けて行ってしまうのです。いっそ大事なことなどこれから何一つ覚えずに、あなたのことをちゃんと覚えていたらいいのかしら。でもそう言ったら、きっとあなたは泣いて引き留めるのでしょう。服が台無しになるほど泣いて泣いて、しまいにぼくも一緒に泣いた。そんな記憶が、まだうすぼんやりと片隅にひっかかっております。
 ああ、また泣いちゃった。はらはらと零れる涙が、熱を帯び始めた灯にきらきらとして宝石のようでございます。綺麗とは思えど、はてな。それ以上にいたたまれぬ心地。
 拭おうと上げた指を、ふくふくとした手がはっしと掴んでまいりました。暖かさ。何処かで同じことをしたようにも、されたようにも思えます。懐かしみとともに拭き去られた透明の雫は、当然ただの塩水ですから、指を伝い空にはじけてしまいました。

「ぁあ」

 あの耀きのまま、本当につぶつぶと石になってしまえば、それを大事な宝物としてとっておいて、それで何とかあなたを思い出せたのやもしれません。紐づけというのは実に偉大です。しかし現実は非情ですね。ぼくはあなたを忘れるしかないようなのです。

「 」

 嗚呼やれやれ。どうしましょう。忘れちゃいけないことまで忘れかけています。何か言おうと思ったのに、声どころか言葉も出てきやしません。覚えるよりも早く抜けていって、覚えられなくなって、何を覚えていなきゃいけないんでしたっけ。何を忘れていいんでしたっけ。
 ああ、いけません。この人はどなたでしょう。仕方ないのであなたの頬を両手で包んでおきましょう。何故だかは忘れてしまいましたが、そうするとあなたが笑うことは覚えております。笑うというのはとても好ましい感情です。ぼくはひとをこのましくするためにここにいます。
 あれ、でも。
 あなたは泣いている。


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どもはじめまして
液晶に生息してます
小説苦手だけど
なんか書いたよ
一時間くらいで書いた
へたっぴだけど許ぴて

敬語執事ロボと
メカニックっていいよね
悲恋させたくなるし
ハピエンで終わらせたくなる