名前も知らないのに、彼女は笑っていた。
それが、僕と妹との最初の出会いである。
「…ん?どうしたんですか?」
そう言って僕、小見央(おみひろし)が、車椅子に座った目の前の少女に語りかける。
何故彼女は笑っているのだろう。
何故、彼女は笑って、いるのだろうか?不思議、不思議、不思議でよく分からなかった。
「…」
彼女は喋らない、喋れない、だから分からない。
「…はぁ、分かりました」
無言の少女に僕は返答を諦めた。
彼女の名前は、小見治巳(おみはるみ)。
僕の妹で、「弟」でもある。
簡単に言ってしまえば、「性別は書類上では女だが、見た目は男」なのである。
他人に説明するときは「この子は性転換して、男になった存在だ。」と、説明している。
だが、普通、この説明を受けて、「はい?」という返答しか、聞いたことがない。
普通、「この子は性転換して」っていう部分が理解がし難いのだろう。
それは仕方ない、それは僕でもそうだったからだ。
まず、治巳は「僕の妹ではない」からだ。
僕の両親が別れて、母方に吸収され、その後、母は僕と同年代の娘を持つ、男性と結婚した。
継父、義父である。
そのときに僕は妹、治巳と出会ったのである。
僕と出会ったときはまだ、治巳は男ではなく、見た目も中身も女の子だった。
「何とも可愛らしい娘だろうか?この娘が僕の手の中に?彼女の下着も彼女の股間も彼女のお尻も彼女の胸も彼女の母乳も、全部全部僕の物になるのか」なんていうふざけた事は思わずとも、流石に「この娘が僕の妹に?何とも漫画みたいな出来事だろうか?」とは思った。
だが、そんなことを思っても、「たかが妹(血がつながっていない)、下着姿を見ることはあっても、その先は基本ないよなぁ?」などと、高を括ってはいたが、まさか、治巳はそれを呑気に、自由に、勝手に踏み外したのだから。
「央さん?少し話があるんです」
「はい?何ですか?」
「えーと…此処では話せないことなんです」
「話せないこと…成程」
僕は「それほど重要で大切なことなんだろう」と思った。
だから、僕は彼女の手をつかんで、自室へと運んだ。
自室は青色を基調とした、質素で、ベッドの木組み部分以外は青を基調としていた。
別段「青が好き」ってわけではないのだが、色の選択が面倒くさかったので、仕方なく、青にしただけだが。
「さて」、と僕はベッドに座って、治巳を机に備わった椅子に座らせる。
細く、長い足が白のワンピースの中から見える。
もう少し栄養をとらないと、そんなことを思っていたところだった。
「央さん、聞きたい事があります」
「何でしょうか?」
自分が淡々と彼女に返答、すると彼女は「女の子が男の子になる、それって可笑しいことですか?」と発言した。
「可笑しいね、いや、性別転換は流石に人道に反している、僕はそう思うよ」
本心を治巳に伝えた、すると治巳は「そうですよね…知り合いに伝えておきます」と言う。
何だ、知り合いの話か、僕はそう思い、安堵した。
一応言っておくが、僕は男尊女卑をあまりよく思っていない存在だが、かといって、男卑女尊もあまりよく思っていない。
性別のことなんて、個人的にはどうでも良いからだ。
だが、流石に性別転換はダメだと思う。
本心を彼女に伝え、彼女はどう思うのだろうか?と思ったが、まぁ、友人だ、僕には関係ないよなぁ?と思って、「それでは、失礼しました」と言って、彼女は自室を出た。
そしてその夜、僕が寝ようとすると、治巳と父親、更に母親の声が聞こえた。
自室は二階、言い合いは一階から起きているので、おぼろげに聞こえるだけだが、母は治巳を応援、父は治巳を罵倒していた。
流石に僕は母の味方、母の意見を尊重する。
血縁がない父の味方ではない。
面倒になったので、僕はイヤホンを耳に付けて、寝ることを考えた。
そして、翌日、急に僕は両親から言われる、「治巳が入院する」と。
流石に昨日の言い合いで父側が傷つけたか、と思った。
そして一ヶ月が経った、自分は洗濯物の中の治巳の下着やブラジャーを畳んでいるとき、「ただいまー」と、玄関から可愛い声がした、治巳だ。
僕はリビングから玄関に移動し、「おかえり」と、そう呟こうとしたとき、先にリビングの扉が開いて、自分の目の前に「髭面の男性」が立っていた、その男性の口から、「央さん、お久しぶりです、性転換しました!」と、「男性の顔から治巳の声」がした。
唖然、まさか、妹が性転換とは。
まぁ、どうでもよかったので、「あっ、そう、おめでとう」と、上辺だけ喜んだ、そして抱きしめた。
「ちょっと恥ずかしいですよ…!」と言うが、自分はずっと抱きしめた。
まさか約一ヶ月、約一ヶ月も性転換手術及びホルモン注射及びリハビリを行っていたのか…自分がそう思っていた矢先、彼女はまた入院した。
何度、何度入院すればいいのか?そんなことを思いながら、彼岸花でも持って行ってやろうか、と思ったが、流石に僕の友人が止める。
仕方ないので、そこら辺の雑草でも拾って、添えようとした。
雑草と言っても、色とりどりな雑草もある。
そして、何種類かの雑草を掴んで、治巳の病室へと向かう、扉を開けて、自分の目に入ったのは、「左足をつられ、首を包帯で巻かれている姿」だった。
えっ?どういうこと?治巳は何でこんな重傷に?そう思い、筆談で聞いた。
話を聞く(聞くと言うより、読む)と、治巳は友達と歩道橋の上で帰宅中、片思い相手にナイフで切られ、更に歩道橋の階段から突き落とされ、足を骨折していた。
ナイフで切られた場所は喉、喉を切られたせいで彼女はしゃべれなくなってしまった。
まぁ、手術すれば治るかもしれないが(僕は声帯を切っても復活するしないが分からないから、そんな判断しかしなかった)、だが、骨折だけは治せない。
一日で完治するものではないから、少々やっかいである。
でもまぁ、生きているから大丈夫か、自分はそう判断して、「安心した」と、返答した。
そしてその日から治巳の介護(言い方は悪いが)が始まった。
案外面倒だったが、案外楽しかったりする、治巳のトイレにつきあったり、風呂にも入った。
これが今迄の話で、今からの話は冒頭の「車椅子に座った目の前の少女に語りかける」場面になる。
「…君が性転換をした、だから攻撃された、か…」
こくこくと、頷く治巳、そして僕が自信の胸を揉みながら、治巳に言う。
「大変だねぇ、僕の場合はそんなことなかったのに」
「!?」と言いたげな顔をする治巳、あー、そういや僕のことを言っていなかったな、そう思いながら治巳に行う。
「そういや、君には言っていなかったな?僕は「見た目女、中身男」なんだよ、まさか血もつながっていない兄妹が互いの性に、なろうとは?」
「!?!?!?」
衝撃の発言をして、治巳がだんだんと冷や汗を流す、「えっえっえっ?どういうこと?」と、筆談で記す治巳、だから、自分は言う。
「えっ?いや、普通に僕は見た目女の、中身男なんだって?ずーと、君は僕を「女」と勘違いしていたよね?「最初、出会ったとき」から」
「…、…、…、」
完全に治巳は驚愕している、自分はその場で「おっと、もう時間だ、それじゃあ、今から仕事だから?父さんと母さん、ナースの人に助けてもらってね?」と言って、治巳から離れる。
矢張り自身の正体を明かすのは面白いな?誰もが驚く、自分の正体?僕はそんなことを思いながら、スキップしながら病院の廊下を進む。
まさか、「女と思っていた姉が元男で、妹が何時の間にか元女になっていって」って…これはとんだ姉弟(あべこべ)だろうか?自分はそう思いながら、爽やかな空を見た。
初めまして、小説投稿グループ「五人」と申します。
時間があり次第、集まって、この場所に投稿します。
よろしくお願いします。
結構適当な小説かもしれませんが、宜しく御願いします。