Re: 第7回 硝子玉を添へて、【小説練習】 ( No.235 )
日時: 2018/07/03 21:21
名前: 瑚雲◆6leuycUnLw (ID: hsjz4ydU)

 
 笹の葉から垂れ下がる細長い紙面を見て、私は思う。
 ふざけるな、と。

 『別れたい』──意味のわからないインク塗料の匂いでよけいに腹立たしかった。どうしてこんなことに至ったのか。あいにくだが、当の本人である私には一切覚えがないことだから、説明をしてほしかった。
 話は変わるけれど、私はいま、動物園のパンダコーナーにいる。七夕というやつで、特別なイベントもやっているし入場者もそれなりに多い。それなのに連れ添う相手もなく、呆然とする私の周りをたくさんの人が立ち止まったり過ぎていったりする。そんなたくさんの笑顔が目に入ると、どうしようもなく、辛くなった。

 自分の気持ちを伝えたい。
 いままで私はきっと、そうやって意思表示することを、避けてきたのだ。

 しかし、いったいどうしたらいいだろう。自分の気持ちを伝えるために、なにかいい方法はないだろうか。
 言葉はだめだ。これまでの経験から、伝わらずに終わることが予想される。
 行動はどうだろう。はっきり「嫌」だと伝えるために、目の前のこれを知らんぷりする。いやそれもだめだ。これを無視したところで、根本的な解決には繋がらない。

 「……」

 そのとき。──ゆらゆらと揺れる細長い紙が、目に入った。
 私は、それを手のひらで撫でた。
 
 
 ああ──こんな変なものをつけた笹を私たちに食べさせるなんてとんでもないイベント、どうしたら早く終わるだろうか。
 だれかに願いを託したいよ。
 
 
 
 
 ***

 久しぶりの投稿です! あんまりやったことのないジャンルに挑戦しました。