笹の葉から垂れ下がる細長い紙面を見て、私は思う。
何だか昔のようだな、と。
* * *
菜々花と初めて出会った日、あの時は七夕だった。夜空に浮かぶ天ノ川が綺麗で、家を飛び出して、ひたすらそれがちゃんと見える所へと走っていったのを今でも覚えている。
じゃなきゃ、菜々花と出会って居なかった。
知らない公園のブランコで、夜に一人、10歳程の女の子が空を見てたら、誰だって気にするだろう。
でも、菜々花は違った。
「こんばんはー!わたし、ななか!あなたは?」
いきなり話し掛けてきて、ブランコの隣に座り、こちらを見てくる。
夜の8時ほどだと言うのに、菜々花はとても元気で、知らない公園に一人だった私には、同い年がというだけで、簡単に話せた。
「えっと、私、るみ。よろしくね」
「天の川、きれいだね~!あ、どこの小学校?」
「あ、あそこ。ビルの影にある学校」
「私、明日からそこ行くんだ!同じクラスだといいね!」
そんな話をして、二人とも道に迷ったことが分かり、近くの交番に行って親に連れて帰られたのを覚えている。
それから私の親が海外に行って、菜々花の家に住まわせてもらって、最終的には菜々花と二人暮らし。
それよりも、あんなに可愛かった菜々花が、まさか茶髪の明るいギャルになるとは思いもしなかった。
毎日のメイクは欠かさない、肌はバンバン出す、休日は友達とカラオケやら原宿やら。
私も私で、そんな親友と暮らしてるというのに高校でボッチ飯とはどうなんだろうか。
「たっだいまー!」
「菜々花、お帰り。部活?」
「そーそー!女バスは多いんだよ!」
「美術部は少なくて気楽だぞー」
なんて適当な会話をしつつ、低いテーブルに飾られた偽物の竹に、自分の願い事を書いた紙を掛けて、夕食の準備をする。
菜々花の願い事は
『試合が上手くいきますように!!』
菜々花らしくて、思わず笑みがこぼれる。
もう少し私を見てくれても良いと思うんだけど。
「あ、みーも願い事書いたんだ!」
「そりゃあ描くべきでしょ」
「そっか、陰キャで友達いないもんね!」
「家から追い出すよ?」
「ごめんって」
七夕があったから、菜々花といられる。
七夕があったから、楽しく過ごせる。
七夕があったから、人生が充実してる。
七夕にここまで感謝しているというのに、描かない訳にはいかないでしょ。
「みーの事、私は大好きだよ!」
料理をしているというのにいきなり抱きついてきて、人に触るのに躊躇いないな、なんて内心思いつつ、こう答えた。
「ありがとう」
そう、一言。
きっと私の願い事なんか興味が無いんだろうけど、私も、菜々花が大好きだよ。
七夕の短冊に、
『菜々花と付き合えますように』
なんて書く位にはね。
「菜々花の好きなハンバーグ、できたよー」
「やった!みー大好き!」
すぐに大好きって連呼するとこ、ちょっと気に入らないけど、好きな言葉をいっぱい言って貰えるのは、嬉しい。
だから私は、全部含めて、
菜々花の事が、大好きだよ。
【短いし凄い下手ですか。ただ単に百合が書きたいだけなのに七夕混ぜるとか失敗のきわみですね。
多分5回目の参加だけど、進歩してなさすぎてヤバいですほんと。
もう少し成長するべきですね。】