笹の葉から垂れ下がる細長い紙面を見て、私は思う。
夏だな、と──だが、私には関係が無い、何故なら私に『季節』等、関係ないからだ──
『死線』、それは『生きるか死ぬかの重大な境目』の事。だが、私には、『死線』は違う意味を持っていた。私にとっての『死線』、それは『死の線』である。『死線』はどんな人間、動物、物、モノ……『どんな存在にも存在する』線だった。基本的に『死線』は頭頂部に存在しており、髪の毛の様に細い、おまけに何故か天空に向かって、ぴんっと、張ってあるのだ。どれだけ高いかは不明だが、多分宇宙から見たら、日本やアメリカ、中国、インドの『死線』の量は完全に中国の『パイロンシュー』に見えると思う。そんな『死線』を私は見る事が出来た。だが、この『死線』にも種類があるのを、私は知った。まず、白色の『死線』は『まだ正常な存在』という事、赤色の『死線』、黒色の『死線』は……もう手遅れだ、特に黒色の『死線』はアウトだ。……解説をしようとすると、少々長くなるが、簡単に言えば、赤色の『死線』は『死ぬ数ヶ月前の存在』、黒色の『死線』は『死ぬ数日前の存在』である。これは長年見てきての発想、考え、記録なので、間違っている部分も有るかもしれない。まぁ、それはそれで仕方無いだろう。だが、私が出会った男は『少し』違った、いや、『完全に違った』のかもしれない。これは私とその『男』との、少々奇妙で、異質な物語だ──
「……はぁ、今日も転校か」
午後五時、夕暮れの空を見ながら、私は一人ごち、鞄を肩に引っ掛けながら、歩いていた。今の格好は長い紺色のプリーツスカートに、紺色のセーラーに、ワインレッドのリボンをした、制服の姿だった。そうだ、私は『女子高生』だ、一応『死線』が見えると言っても、元々は一般家庭の一般人の女である、『死線』が見えるという特殊能力さえ隠していれば、普通に学校にも通えるし、一般人と同じ生活が出来る。カッコいい男性と結婚し、可愛い子を生(な)せる、ただただ一般人と同じ生活が出来る。だからこそ、私は学校に通い、少しでも、平凡で、普通な日常を手に入れようと奮起していた。だが、そんなのは叶わない夢なのだが。んで、今日も親の転勤で先月から行った高校も転校する。まぁ、転校する事は慣れている、今迄に何回転校した事か? 多分二十回は超えている。多いからと言って、何だと言うのだが。……また、転校か。まぁ、仕方無いよ? 親の仕事が転勤が多い仕事だから? 私はそう思いながら、その場で溜息を吐いた。そしてふと、周りを確認する。もう暗くなり始めていた。
「うわっ!? もうそんな時間なの!? 急いで帰らないと……!」
私はそう言って、鞄を肩から下げ、両手で思いっきり前後へ動かし、前へと進む。家は此処から一本道、少し曲がって存在しているので、すぐに迎えた。だが、『今日』という日は違った、とても違った、それは何故かって? 簡単である、何故なら『私の目の前でパンツ一丁、トランクスの男が『上空10メートル』から落ちてきた』からである。おまけに脳天直撃で地面にぶつかった。あっ、これは死んだな……小さな頃から『死線』が見える私にとっては、『死』は友達の様に慣れているので、『人が落下して死んだ』位、全然動揺はしない。動揺はしない、だけど、冷静に、指はスマホを手に取り、電話画面を開いて、『110』を打っていた。そして私が二番目の『1』を打った所で。
「いたたたた……」
!? えっ!? 私は驚愕し、スマホを落としてしまった、かしゃぁん、ケースが地面にぶつかる音で、『おや?』と、目の前の男性が呟く。
「あっ、見られた……」
相手の男性が言うや否や、パンツ一丁でその場で綺麗な土下座をし、『どうかこの事はご内密に!』と、言う。ご内密……? 一体どう言う事なのだろうか? 私は内心不思議に思いながら、男性を睨んだ──