一番大切な臓器って何だと思う、と君が言うものだから。
「待て、お前喋れたのか?」
俺はそう返す他なかった。何せ目の前のこいつは出会ってから一か月間、一度も口をきいてくれなかったから。
森の中で拾った、ペットのような存在。そうずっと思い続けていた。だが今になって急に人語を解すことを披露されてしまい、呆気にとられる。
「いや、そりゃ話せますけど。おたくもしかしてウチのこと動植物の類やと思ってたん?」
「しかも変な訛りと一人称だなおい。え、いや俺も流石にそんな普通の類じゃないとは思ってたけどさ……」
では一体何だろう、と思考を巡らす。
体長は成人男性である俺と同じほど。毛はないが、皮膚は少々イボが硬質化した棘の様なものが生えている。手足は細長く、指先が器用なんだろうなという印象を受ける。
目は玉虫色に輝いていて、見ているとまるで飲み込まれるかのような気持ちになる。
そして極めつけに体色は……緑だ。
「──もしかして宇宙人?!」
「いや遅くない? 今になって気が付くもんかねそれ」
だいぶ宇宙人感出してたぜ俺、と彼?は手を広げ呆れているが、俺が鈍いわけではない。コイツが巧妙だったのだ。
野生の動物の倣ってか、食事は生肉を要求し、時折縁側で日光浴までする始末。おかげで俺はご近所様から謎の生物を飼う非常識人扱いされ、回覧板を回してもらえなくなった。
なるほど、外界からの情報をシャットダウンさせるための行動と考えれば合点が行く。
「それで、いつ自転車を空に飛ばしてくれるんだ?」
「分かった途端それ? というかあれは映画だからな、普通の宇宙人にそんなことできないよ」
「普通の宇宙人ってなんだよ。変な宇宙人とかいるのか?」
「ウチ的に言えば目の前のお前かな」
「え、もう一体いるの?! どこどこ!」
「お前だよ。というかさり気にカウントは 体 なんだな」
何を言うか宇宙人、お前は人間ではないのだから人なんて換算をする訳が……待てよ、宇宙"人"なのだから合っているのだろうか。いやもしかしたら羽とか、匹を要求しているのかも?
落ち着くのだ、これは人間と宇宙人のファーストコミュニケーション(一か月目)である。迂闊なことを言えばキャトルミーティレーションされるかもしれない。
「で、なんだっけ? 好きな食べ物の話?」
「いや一番大切な臓器は何かって話」
「なんでそんなこと聞くのさ、焼肉でもいきたいの? 俺はタンかなぁ」
「焼肉? いや別に……舌(タン)? なるほど喋れなくなるのはつらいだろうからな。しかし心臓はどうだ、これが無ければ生きてはいけないだろう」
「心臓(ハツ)? 確かにいいもんだけど……別に無くても生きていけるよ」
「えっ、人間て心臓無くても生きていけるの!?」
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勢いで書いて、纏まらなくなりました。やっぱりちゃんとオチが付けられる人をって凄いなと思う日々です。