Re: 鎌鼬に添へて、【小説練習】 ( No.292 )
日時: 2018/11/16 16:20
名前: 夕月あいむ (ID: zrZRcXis)

 新参者です。ジャンル所か、短編小説を書いたことがありません。なので、挑戦したいと思っています。
 前編と後編があります。

 前編 お題 『もしも、私に明日が来ないとすれば』

 「もしも、私に明日が来ないとすれば、君はどうする?」
 「は? 無いでしょ、姉さんゴキブリ並みの生命力だから」
 なんでそんなこと聞くんだよ?
 明日、世界が終わるんだったらあり得るけど。
 「そんな顔しないでよ、聞いてみただけ」
 そんなに僕は、嫌そうな顔をしていたのか。
 見透かされてるみたいで少し恥ずかしくなったので、頬を触る。自覚が最近までは無かったのだが、恥ずかしくなった時の自分の癖だそうだ。姉に指摘され、気付いた。
 「どう? お姉ちゃんの手料理のお味は?」
 「嘘だ、これスーパーの惣菜だし」
 「バレたかぁ……」
 姉は、いつもニヘラと笑う。
 茶化してるようなので、鼻につくがもう慣れた。
 僕は、少し不機嫌になり、半目で姉を見つめる。すると、姉は、微笑んできた。
 「何? 気持ち悪いよ……。」
 「相変わらず毒舌だなぁ」
 「あっそ、で、何でにやついてんの?」
 「いやぁ、もう八年経ったかぁと、思ってさ」
 「何が?」
 
 「私が君を誘拐してから……」

 「日にち覚えてたんだ」
 「まぁね」
 二人はしばらく黙る。僕は沈黙は好きじゃないので、静けさを打ち破る。
 「今さら、警察に訴えないけど」
 「そう、そりゃ良かった。警察にバレたら少年院満期行きだな、ハハッ」
 「笑い事じゃないだろ」
 「いっそ、記念日にしようか? 私と君が家族になった日」
 「記念日だなんて、何で祝えるのさ、自分の初犯日を?」
 「ケーキ食べれんじゃん、それに私、君の誕生日知らないし、それが新しい誕生日にしよう!」
 「あっそ、もうどうにでもして」
 
 
~~~~~

 軽く自己紹介しよう、私は現在19歳、普通の大学生。
 特徴?
 
 強いて言うなら、犯罪者と言うことだろうな。

 全然内容が軽くないじゃないかって? 君、注文多いいなぁ……。
 何やったんだ? って? 二人殺して子供一人誘拐してるよ。
 あぁ、経緯ね。事件当時は、私は多分、10歳だったと思う。殺した二人は、昔自分が住んでいた家のお隣だったんだ。結婚はしてなかったけど、子供はいてね。やっぱり子育ては大変だったのか母親は、近頃子供に手を出し始めた。子供はまだ、小さいんだ。なのに、子供の叫び声は毎日毎日聞こえた。壁はそんなに薄くないのに、相当声がしていたよ。子供は、声はするけど家から出ない。まぁ、確実に虐待はされてたよね。
 まぁ、それで五月蠅かったんだ。
 だからあの家だけ燃やしたよ。
 二人は殺したけど、何故か子供は気が引けたんだ。だから、誘拐した。
 その母親が、火に包まれた時、私は子供を抱きかかえたんだけど、その瞬間母親が。

 「あなたが今度こそその子を幸せにしてくれるの? しなかったら楽に死ねるとは思うなよ」

 って、笑いながら言ったんだ。
 その時、私は、やっぱり母親なんだなぁと思ったし、この人は私たちと同じ、バケモノじゃないなっておもったよ。
 ~~~~~
 「まぁ、こんな感じかな。君を誘拐した事については。大体予想ついてたろ?」
 「……」
 僕は、答えられない。
 (どうして今? なんで?)
 そんな疑問が渦巻いているからだ。
 ピラッと姉は、紙を出した。三人の女の性格や写真職業などが書いてある。  
 「何……これ」
 酷くかすれた声が出た。
 「君をこれから養ってくれそうな人さ。君はまだ戸籍も無い。小学校には行けなさそうだけど、中学校には行けるよ、勉強は私が教えたしね。これでやっと、君は普通の人になれるよ」
 「いらねぇよっ!」
 そんなの要らない、いつも通りで良い。
 普通じゃなくても良い。
 外に出れなくても良い。
 学校に行かなくても良い。
 貴方以外、僕のことを知らなくても良い。
 貴方が、僕の親を殺したとしても良い。

 だって……。

 僕の家族は、貴方だけだから。

 ~~~~~
 風が強く、寒い。最上階で、街を眺めながら思い返す。
 結局喧嘩しちゃたなぁ……。
 「僕の家族は、貴方だけだから、か……。それを奪ったのは私なんだけどね……。警察には、連絡したからもう大丈夫か」
 まだ、戻れるんだぜ。君はさ。
 でも、きっと私が戻れなくしてしまったから。君は、私を置いてけないからさ。
 

 「だから、鎖は消えて。君を力尽くでも戻すよ」
 身体が全体が、震えている。心臓もうるさい。
 やっぱ、怖いな。
 
 でも、駄目だ。

 手の力を抜く。重心は傾く、髪はあらぶり、視界は夜空を映す。

 (綺麗だな)

 もしも、私に明日が来ないとすれば。

 その時は、君に本当の家族の温かさを私の代わりに、知って欲しい。